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2019.08.01

インタビュー

KUKAは高品質のメカをニッチな分野にも、IoTにも提案する【前編】/KUKAジャパン星野泰宏社長

産業用ロボット業界では、スイスのABB、ドイツのKUKA(クカ)、日本のファナックと安川電機が世界4強メーカーとされる。しかし日本では、川崎重工業や三菱電機などを含めた国内メーカーの知名度が抜きんでており、海外メーカーの特徴や取り組みは意外に知られていない。4強の一角であるKUKAは日本市場をどう見ているのか。KUKAジャパン(横浜市保土ヶ谷区)の星野泰宏社長に聞いた。

KUKAの歴史はガス式の街灯から始まった

ドイツのKUKA本社の外観

――まずは、貴社の概要について教えてください。
 KUKAはドイツに本社がある、産業用ロボットやファクトリーオートメーション(工場自動化、FA)機器メーカーです。世界30カ国ほどに拠点があり、昨年のグループ全体の売上高は約32億ユーロ(約3800億円)で、従業員は1万5000人ほどです。

――歴史は。
 創業は1898年です。当時は、当然ロボットの発想すらありません。ガス式の街灯や室内灯から事業を興しました。そこから時代を経て、ガス灯技術の応用でガス式の溶接装置を作り始め、やがてガス溶接で自動化を提案し始めました。初めて自動化設備を手掛けたのは1956年で、自動車工場のマルチスポット溶接装置でした。

――60年代からロボットへと注力した。
 60年代以降、ガス溶接やガスによる金属切断などのガス技術の応用に重点を置きました。70年代に入ると、溶接ラインで自動化が求められ、ロボティクス事業も加わりました。世界初となる垂直多関節の電動6軸ロボットを開発したのもこの頃です。ただ、かつての企業規模は決して大きくなく、2000年には従業員がまだ500人程度でした。それが05年には約6000人へと急成長。高まる自動化ニーズに応え、一気に成長し事業を拡大しました。

――現在はどのような事業をしていますか。
 工場の生産ラインを構築するシステム分野、産業用ロボットを製造、販売するロボティクス分野、自動倉庫、ヘルスケア関連の4事業です。特にシステム分野やロボティクス分野が得意です。ドイツが掲げる製造業の生産効率化のコンセプト「インダストリー4.0(I4.0)」では、構想の立ち上げ当初から参画しました。I4.0をけん引する一社といえるでしょう。

玄人好みのロボット

豊富なラインアップの一例。左から可搬質量や用途の違う製品が並ぶ

――KUKAのロボットの強みは。
 製品ラインアップが豊富な点です。一般的な産業用ロボットから、衛生面への配慮が必要な食品産業向けや半導体のクリーンルーム向けなど各分野や用途別に細かく種類をそろえています。可搬質量やアームが届くリーチの長さも細分化しており、カタログ品だけでも把握しきれないほど多くの製品があります。

――製品の特徴を教えてください。
 高評価をいただいているのは2点。一つは動作精度の高さ。もう一つは剛性(変形のしにくさ)の高さです。事前に組んだプログラムに限りなく近い軌道で動作します。また剛性もあるため、金属のレーザー溶接やレーザー切断にも使われます。工作機械ほどの精度は出ませんが、先端に回転機構と工具を付けて切削加工をする事例もあります。

「玄人好みなロボット」と星野泰宏社長

――金属加工の実作業を担うロボットは、他社でもそう多くはありません。
 そうですね。エンジニアが意のままに操れるロボットと言えるでしょう。プログラムを作り込めば、作りこむほど成果が出せる。そういう意味では「玄人なエンジニア好み」かもしれません。世界4強メーカーでは唯一のドイツ企業で、メカの性能やエンジニアの使いやすさに重きを置くドイツの設計思想が反映されています。またそれに見合う制御技術も日々、開発を進めています。最近では稼働シミュレーション用のソフトウエアを拡充しています。

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