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2019.09.05

連載

[SIerを訪ねてvol.10]3Dばら積みピッキングで注目集める新会社【前編】/トキワシステムテクノロジーズ

ロボットシステムの設計や製作を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)を紹介する連載企画「SIerを訪ねて」も、とうとう10回目を迎えた。今回は、名古屋市中区に本社を構えるトキワシステムテクノロジーズ(TST、今井嘉之社長)を取材した。2018年2月に設立したばかりの新会社で、独自の画像処理技術を駆使した3次元(D)ばら積みピッキングのシステムを得意とする。19年7月には、6軸の垂直多関節ロボットを使った、ボルトや円柱形状の部品のピッキングシステムを新たに開発した。

TSTが技術、常盤産業が営業

 TSTは、名古屋市営地下鉄の東別院駅から徒歩4分ほどの場所に本社を構える。
 名古屋で一番の繁華街がある栄駅からは名城線で乗り換えなしで5分、名古屋駅からは栄駅で乗り換えて10分ほどで東別院駅に行ける。近くには名古屋高速都心環状線のインターチェンジもあり、自動車でのアクセスも良好だ。
 
 TSTは、商社でありながら工場の自動化(ファクトリーオートメーション、FA)関連の設備や環境関連機器、油圧システムの設計製造も手掛ける常盤産業(名古屋市中区、清水英敦社長)のグループ会社で、2018年2月に設立したばかりの新会社だ。社員数は6人で、特に画像処理技術を生かした3Dばら積みピッキングのシステムに強みを持つ。
 常盤産業はTSTが開発したロボットシステムの営業活動や、システム構築の全体的な取りまとめなどを担う。清水社長は「TSTが技術部隊で、わが社が営業部隊という風にすみ分けている」と語る。

中小企業がターゲット

常盤産業の清水英敦社長(左)とTSTの今井嘉之社長(右)。中央はTSTが開発した樹脂部品のばら積み整列ピッキングシステム

 TSTが得意とするばら積みピッキングとは、トレーの中にばらばらに積まれた部品をロボットが認識し、ピッキング(部品を取り出すこと)する作業を指す。

 今井社長は「製造現場では、中小企業の作業員がばら積みピッキングの実作業を担っている。そのため、わが社のシステムは製造業の中小企業を主なターゲットに据えた。『低価格で、誰でも簡単に使えること』をコンセプトに、独自のばら積みピッキングシステムを開発した」と説明する。

 現在は、大別すると2つのタイプの3Dばら積みピッキングシステムを持つ。
 一つは、小物部品を対象としたばら積みピッキングシステム。ばらばらに積まれた樹脂部品や金属部品をロボットが認識してトレーから取り出し、自動で整列させる。
 ロボットの可動範囲内には3Dビジョンセンサーや側壁など、ロボットにとっての障害物が数多くある。ばら積みピッキングでは、こうした障害物との干渉(ぶつかること)を防ぎながら部品を取り出すことが重要だ。

樹脂部品のばら積みピッキングシステムの概要(TST提供)

 そのため、独自開発の干渉回避機能を搭載した。3Dビジョンセンサーで認識した画像データを基にロボットの動作を事前にシミュレート。障害物と干渉する可能性があれば最も取りやすい位置にある部品でも見送り、干渉する可能性がない部品だけをピッキングする仕組みとした。
 清水社長は「干渉する可能性はいたるところにあり、ロボットは好き勝手に動けるわけではない。干渉回避の機能が非常に大事」と語る。

 上の動画は樹脂部品のばら積みピッキングを実演しているが、L字型の独特なロボットハンドの形状が目に付くだろう。
 樹脂部品のピッキングでは主に真空の吸着ハンドが使われるが、吸着用のノズルと吸着面が垂直でなければうまく取り出すことができない。「ハンドの形状は、狭い空間の中で干渉を防ぎながら樹脂部品を正確に取り出すための工夫」と清水社長は語る。

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