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2019.12.02

[特集 国際ロボット展vol.5]ロボティクス技術とセンシング技術を融合/セイコーエプソン

セイコーエプソンのロボティクスソリューションズ(RS)事業部は、ロボット製品の幅広いラインアップと、力覚センサーや画像処理システムといったセンシング技術の2つを強みに持つ。これらを融合することで、より高度な自動化システムを顧客に提案できる。今年12月に開催される「2019国際ロボット展(iREX2019)」でも、ロボティクス技術とセンシング技術を融合した自動化システムを数多く展示する。

スカラは8年間連続で世界シェア1位

セイコーエプソンは産業用ロボットメーカーとして35年以上の歴史を持つ(写真は第2回名古屋ロボデックスで撮影)

 セイコーエプソンはプリンターで広く知られるが、産業用ロボットメーカーとしても35年以上の歴史を持つ。

 同社では「省・小・精の技術」をモットーに、全ての自社製品を製造する。省・小・精とは省スペース、小型、精密、高精度をそれぞれ意味する。ロボットも1983年に外販を始めて以来、小型で軽量な製品を中心に開発してきた。

 ロボット関連製品を取り扱うRS事業部では、スカラロボットや垂直多関節ロボットに加え、オプションとして力覚センサーや画像処理システムなども手掛ける。
 特に小型スカラロボットを得意とし、富士経済の調査によると2011年から8年間連続でスカラロボットの世界シェア1位を維持しているという。

自社工場も重要顧客

ユニークな軸構造が特徴の「Nシリーズ」

 RS事業部の強みは豊富なロボット製品のラインアップと、力覚センサーや画像処理システムといったセンシング技術の2つ。
 これらが同じプラットフォーム(基盤)の上で緊密に統合されることで、幅広い自動化のアプリケーション(応用的な使い方)を顧客に提供できる。RS営業部の浜口周治部長は「ロボットとセンシング技術を融合し、より高度な自動化システムを提案する」と話す。

 スカラロボットでは、旗艦製品で幅広いラインアップを誇る「Gシリーズ」をはじめ、最量販機種の「LSシリーズ」、天つり型の「RSシリーズ」、コントローラー一体型の「Tシリーズ」の4シリーズをそろえる。RS営業部の水野広大氏は「スカラロボットでこれほど充実したラインアップは他のメーカーにはない」と胸を張る。
 垂直多関節ロボットでも主力製品の「Cシリーズ」や、ユニークな軸構造を採用し省スペースを実現した「Nシリーズ」、コントローラー一体型の「VTシリーズ」を用意する。

RS営業部の浜口周治部長(左)と水野広大氏

 同社のロボット製品は、主に電子機器や自動車関連の小物部品の搬送や組み立て工程を中心に導入されている。
 浜口部長は「ターゲット市場を細分化し、工程や用途ごとのニーズを突き詰めた結果、今のラインアップになった」と説明する。プリンターや腕時計を製造する自社工場もRS事業部の重要顧客で、そこで得た知見をロボットの開発に生かせるのも大きい。


 また、腕時計の製造で培ったノウハウを生かし、同社は水晶圧電方式の力覚センサーを内製する。高感度と高剛性を両立したのが特徴で、電子部品の端子の挿入や歯車同士のかみ合わせなど、微妙な力が求められる作業の自動化を実現できる。水野氏は「力覚センサーが必要になるのは、人がやっている高度な作業をロボットに置き換える場合か、ロボットの圧力を可視化してトレーサビリティー(追跡可能性)を確保する場合のいずれか。先進国では両方とも高いニーズがあり、力覚センサーの需要が増している」と話す。

 さらに、プリンターやプロジェクターなど画像を扱う機器を長年にわたり開発、製造しており、同社は画像処理の技術にも長けている。その技術を応用し、ロボットに合う画像処理システムも自社で開発した。
 つまり、ロボットや力覚センサー、画像処理システムを全て自社で提案できることが最大の強みと言える。これらを横串で支えるのが、統合開発ソフトウエア「エプソン RC+」だ。

iREX2019では実用的な展示をメインに

iREX2019の小間のイメージ図

 iREX2019でも、ロボットとセンシング技術を融合した自動化システムを数多く展示する。「『みえる』『できる』で現場を変える」をキーワードに掲げる。
 目玉は、ユニークな軸構造が特徴のNシリーズ。複数のシステムインテグレーターパートナーと共同で、力覚センサーや画像処理システムと組み合わせた自動化システムを披露する。

 また、トレーが振動する「フレキシブルフィーダー」に自社の画像処理システムやロボットを組み合わせたソリューションも提案する。①トレーに載せたワークを揺らして分散させ②画像処理でワークの表裏判別をし③ロボットがピッキングする――工程を繰り返す。ばら積みピッキングと違い、シンプルで低コストなのが特徴だ。
 従来はワークが変わるたびにエンジニアがトレーの振動を調整する必要があったが、今回はワークの形状に合わせて振動を自動で調整する機能も披露する。

 国際ロボット展では最先端の技術をPRする出展者が多いが、同社は今回、現場に即した実用的な展示をメインに据える。
 浜口部長は「キーワードに掲げている『できる』と、『使える』は違う。来場者に『自社でも使えそうだ』と思ってもらえるレベルまで落とし込んだ自動化システムを紹介する」と強調する。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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