AGVを正しく選ぶには。まずは来て、見て、触れる/明電舎
イメージ膨らむ展示スペース
明電舎は、電力・エネルギー関係のインフラ機器を扱う社会インフラ事業や、モーターをはじめとする産業機器部品を扱う産業システム事業など、電気に関わるさまざまな機器やシステムを提供する。
産業システム事業には物流関連も含まれ、自動倉庫システムと連動して荷物を作業現場まで搬送するAGVも製造する。
2019年9月、製造を担う名古屋事業所の工場内に、AGVの展示スペース「AGVファクトリー」を開設した。直接見て、触れる場所があることで、導入を検討する企業は性能を確認でき、導入のイメージもしやすくなる。顧客が操作トレーニングをする場としても活用するという。
「AGVが活躍する実際の生産現場は、一般公開されてないことが多い。搬送作業をする光景はなかなか見られないため、AGVファクトリーの開設に至った」と産業物流推進部の堀越論部長は説明する。
展示される4タイプ、3方式
同ファクトリーでは何が見られるのか。
用意した実機は4機種で、うち1機種は、市販の台車に駆動部分やコントロールユニットなどを取り付けるキットタイプの簡易型。その他、ファナックの協働ロボットを搭載したタイプ、パレット(荷台)搬送に適したフォークリフトタイプ、工場での工程間の搬送に適した台車タイプの3機種をそろえる。
AGVに搭載した協働ロボットによる棚からケースの取り出しや、2台のAGVが連携して荷台の受け渡しをする様子などが見られる。さらに、簡易型AGVの組み立てや、走行ルートの設定についての講習も受けられる。
AGVの誘導方式は、磁気テープを床面に貼る「磁気誘導式」と、壁や柱に設置した反射板にレーザーを照射して位置を検出する「レーザ誘導式」、それらの方式と周囲の状況をレーザーで認識するSLAM誘導方式を併用する「マルチ誘導式」の3種類。展示される4機種には、それぞれの特徴に合わせた誘導方式を採用しており、動きの違いを確認できる。
どんな場所に最適なのか
明電舎は1983年にトヨタ自動車と業務提携してAGV事業に参入した。工場内の搬送工程の自動化に35年以上携わってきた。
AGVは使用する工場や工程によって搬送物のサイズや重量が違う。そのため蓄積した実績やノウハウを生かし、顧客に合わせてカスタマイズした製品、システムを提供する。近年では、労働人口の減少による人手不足から、生産や物流現場で省人化、省力化の動きが盛んになり、引き合いも増えているという。
AGVが活躍できる工程の特徴として、明電舎は6つのポイントを挙げる。①手押し台車やけん引車で長距離搬送する②運搬ルートが単純で一定③専任の運搬作業者がいる④2交代制、3交代制の夜勤がある現場⑤3K(危険、きつい、汚い)現場⑥付帯設備など、運搬を妨げる障害物が多い――だ。
こういった特徴に当てはまる現場であれば、搬送作業の省力化や、その工程の所要時間の短縮が期待できる。「AGV1台で1.5人分、場合によっては2~3人分の導入効果を得られることもある」と堀越部長。
「顧客次第で活用場所や方法も変わってくる。なのでまずは、自社で使えるかどうかをAGVファクトリーで確認してもらいたい」と強調する。
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)