初期投資なしで自動化? 受託サービスって何だ/テクノ21グループ
独自開発のロボットで製品の生産を請け負う
テクノ21グループは自動化設備の開発、設計、製造を手掛ける。受託開発がメイン事業で、顧客の自動化ニーズに合った自動化設備を提供する。取引先業種は電子部品実装機や眼科医療機器、自動車、鉄鋼、航空宇宙など多岐にわたる。
上村社長は「案件ごとに求められる仕様は異なるが、全体的に設備を『小さく、安く』設計し、製造することを意識している」と話す。
2020年には、新機軸のビジネス「ロボット工場受託サービス」を立ち上げた。21年7月から本格的にサービスを開始する計画だ。
ロボットを導入するには通常、商社を介してロボットメーカーからロボットを購入し、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)にシステムを構築してもらう必要がある。
同社が提供するサービスは、顧客の工場にロボットシステムを納入せずに、同社の工場内に独自開発のロボットを使った生産ラインを設置。顧客から製品の生産を請け負う。つまり、顧客から提供された部品をロボットで組み立てるなどして生産を代行し、完成品にして顧客に納める仕組みだ。
「小さく、安く」をどこまでも追求
顧客は製品の生産に掛かる工賃だけを支払えばよく、ロボットシステムの導入に伴う投資は必要ない。同社の工場内に生産ラインを構築するため、設置スペースの心配もない。保守やメンテナンスも全て同社が対応するため、ロボットの専門的な知識がなくても気軽に受託サービスを利用できる。
上村社長は「従来は人手でやっていた小物部品の組み立て作業などに向く。初期投資が不要なので、自動化の最初のステップとして受託サービスを使ってほしい」と語る。
リモート会議システムを使って生産ラインを公開し、顧客が稼働状況を確認できる仕組みも整える考えだ。
一方、同社の収入源は工賃だけ。適正な利益を確保するには、顧客からもらう工賃内で利益が出せる生産ラインを構築しなければならない。技術力やノウハウが問われるが、上村社長は「わが社が得意とする『小さく、安く』設計する技術を生かせるし、それをどこまでも追求できる」と強調する。
ロボットを自社で開発できる設計力や技術力、そして受託開発で培ったノウハウがあるからこそ、こうした新機軸のサービスの立ち上げに踏み切れたわけだ。
受託サービスで使用するのは、15年に独自開発した垂直多関節型の多軸ロボットアーム。ロボットだけの外販はせず、あくまで自動化設備に組み込むのに使う。
最大可搬質量が3kgの「Type(タイプ)3」、10kgの「Type10」、20kgの「Type20」の3種類を用意する。制御軸の数は顧客の要求に合わせ、6軸でも5軸でも柔軟に対応する。
基本的にロボットメーカーの製品は使わず、このロボットで自動化設備を製造するという。ロボットアームの先端に取り付ける各種機器(エンドエフェクター)も自社設計だ。
「部品製作は全て外注するが、自動化設備の設計や組み立て、調整などは全て自社で対応する」と上村社長は述べる。
30社をいかに集めるか
こうした受託サービスには前例がなく、ロボット活用の新たなモデルとして注目を集めそうだ。
新規性の高いビジネスモデルとして、20年7月には経済産業省の「令和元年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ビジネスモデル構築型)」にも採択された。
ビジネスモデル構築型の補助金は一般的な「ものづくり補助金」とは違い、ビジネスモデルに斬新なアイデアや革新性がなければ採択されない。1次公募では356社の申請に対し、わずか18社しか採択されず、愛知県では同社だけだった。
ただし、補助金の交付決定日から10カ月以内に、30社以上の中小企業に受託サービスを提供しなければならない。2年後には3%以上の事業利益率を確保する必要もある。
そのため、30社をいかに集めるかが目下の最大の課題だ。「鹿児島県や岡崎市との連携を強化しているが、もっと幅広い顧客に受託サービスを周知する必要がある。とにかくPRが急務」と強調する。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)