シールスポンジ材をロボが貼る/豊臣機工
自動化技術を外部にも
自動車の車体を覆うカウル部品やドア部分などを製造する豊臣機工では、防水を目的にゴムの発泡体がついたシールスポンジ材を部品の縁などに貼り付ける作業がある。
これまでは、作業者がシールスポンジ材の両面テープの剥離紙を取り、部品に沿わせたり、任意の場所に貼り付けていた。貼る場所に印があるわけでもなく、しわを作らずに真っ直ぐ付けなければいけないため、作業者には訓練が必要だった。
複雑なシール貼り作業の自動化、さらに作業者の負荷軽減を図るため、同社は産業用ロボットによるシール貼りシステム「ロボットスポンジシーリング」を開発した。
現在は、豊臣機工の工場内のみで活躍しているが、18年にシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のトライエンジニアリングと商社の進和の3社で協業体制を整え、さまざまな用途に対応できる汎用タイプを開発。今年8月から外販を開始した。
シールスポンジ材は自動車部品だけでなく、家電などにも幅広く使われており、市場の規模としては十分にあると判断した。すでに引き合いもあるという。
柔らかい物を支える
豊臣機工がロボットスポンジシーリングの開発を始めたのは2014年から。
「当初は、こんな設備ができるのではないか。という、漠然としたイメージから始まった」と成瀬薫革新工程開発部長は振り返る。
まずは、ロボットアームの先端に取り付ける専用のツールを開発。人の手に変わり、シールを貼り付ける部分だ。
「直線を貼るときは力を抑え、角では粘着を強めたいので強く押す。そんな、人なら当たり前にできる力加減を、いかにロボットで再現できるかが重要」と成瀬部長。ツール先端のローラーと内蔵されたばねの組み合わせ、そしてそれらを制御する技術で絶妙な押す力加減を実現した。
しかし課題もあった。それは、長尺で柔らかなシールスポンジ材の保持方法と、貼った時に出る剥離紙の処理だ。作業者なら両手で支えたり、剥離紙を手に持ったりできるが、ロボットに同じことをさせるのは難しかった。