産ロボ市場に本格参入、減速機の新ブランド立ち上げ/ニッセイ
「次の柱」に
ニッセイはミシンやプリンターで有名なブラザー工業の連結子会社で、各種減速機と小型歯車の製造、販売を手掛ける。
減速機事業では、モーターと減速機を一体化した「ギアモータ」が主力製品。搬送装置をはじめとしたファクトリーオートメーション(FA、工場の自動化)業界をはじめ、自動ドアやETCレーンの開閉機構などへの採用実績も多い。
歯車事業ではオーダーメードの歯車製作がメインで、近年は産業用ロボットや工作機械の市場開拓に力を注ぐ。現在は産業用ロボット向け歯車の売上高比率が最も大きく、全体の約40%を占めるという。
ギアモータと歯車の2本柱で事業を展開する同社が「次の柱」として大きな期待を寄せるのが、高剛性減速機の新ブランド「UXiMO(アクシモ)」だ。産業用ロボットや無人搬送車(AGV)の今後の市場拡大を見越し、約7年の期間を経て今年2月に開発。8月から販売を始め、その翌月にブランド名を発表した。
産業用ロボット向け減速機の開発は初めてで、同社はUXiMOブランドを通じてロボット市場に本格的に参入した。
高剛性、高トルク、大きな中空径
今回発売したのは、大口径中空タイプの高剛性減速機だ。外径は71mm~142mmまでで5枠番あり、小型や中型の産業用ロボットの関節軸が主なターゲット。減速比は19分の1、29分の1、59分の1の3タイプを用意する。
特徴は①高剛性(変形のしにくさ)②高トルク(ねじりの強さ)③大きな中空径――の3つ。小型・中型ロボット向けには波動歯車機構を使った減速機が広く採用され、特定のメーカーが非常に高いシェアを持つ。これに対し、営業統括減速機営業部の岡本浩平RC営業課長は「波動歯車減速機よりも剛性とトルクを高め、差別化を図った」と話す。
高剛性と高トルクを両立するため、競合メーカーが得意とする波動歯車機構ではなく「偏芯揺動型の差動減速機構」を取り入れた。
偏芯揺動型の差動減速機構とは、入力軸であるクランクシャフトの回転に沿って2枚の遊星ギアがインターナルギアの内側を公転しながら自転し、反力ピンを介して出力軸であるクロスローラーベアリングに動力を伝達する機構だ。遊星ギアは、インターナルギアとかみ合いながら回転する。両者の歯数差によって回転が減速され、トルクが生まれる。比較的大型サイズの減速機に使われる構造だが、同社は剛性やトルクの強化を狙って小型や中型サイズの減速機にあえてこの機構を採用した。
減速機事業部開発二部の藤田智之RC開発一課兼二課長は「波動歯車機構は構成部品がたった3点しかなく、減速機を小型化できるメリットがあるため、これまで多くのロボットメーカーが使ってきた。だが、剛性面などで課題があり、ロボットメーカーからも『もう少し剛性が欲しい』との声が聞かれた。そこで、波動歯車機構の課題を解決できそうな新しいアプローチとして、偏芯揺動型の差動減速機構を採用した」と説明する。