生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.10.04

産ロボ市場に本格参入、減速機の新ブランド立ち上げ/ニッセイ

減速機や歯車メーカーのニッセイが今年9月に新ブランド「UXiMO(アクシモ)」を立ち上げ、産業用ロボット向け減速機の市場に本格的に参入した。クランクシャフトを利用した偏芯揺動型の差動減速機構を採用しており、高剛性と高トルク、大きな中空径の3つを特徴に持つ。同社は歯車事業との相乗効果を生かしながら、小型・中型サイズの産業用ロボット市場に攻勢をかける。

「次の柱」に

新ブランド「UXiMO」の高剛性減速機

 ニッセイはミシンやプリンターで有名なブラザー工業の連結子会社で、各種減速機と小型歯車の製造、販売を手掛ける。

 減速機事業では、モーターと減速機を一体化した「ギアモータ」が主力製品。搬送装置をはじめとしたファクトリーオートメーション(FA、工場の自動化)業界をはじめ、自動ドアやETCレーンの開閉機構などへの採用実績も多い。
 歯車事業ではオーダーメードの歯車製作がメインで、近年は産業用ロボットや工作機械の市場開拓に力を注ぐ。現在は産業用ロボット向け歯車の売上高比率が最も大きく、全体の約40%を占めるという。

 ギアモータと歯車の2本柱で事業を展開する同社が「次の柱」として大きな期待を寄せるのが、高剛性減速機の新ブランド「UXiMO(アクシモ)」だ。産業用ロボットや無人搬送車(AGV)の今後の市場拡大を見越し、約7年の期間を経て今年2月に開発。8月から販売を始め、その翌月にブランド名を発表した。
 産業用ロボット向け減速機の開発は初めてで、同社はUXiMOブランドを通じてロボット市場に本格的に参入した。

高剛性、高トルク、大きな中空径

高剛性減速機の新ブランド「UXiMO」

 今回発売したのは、大口径中空タイプの高剛性減速機だ。外径は71mm~142mmまでで5枠番あり、小型や中型の産業用ロボットの関節軸が主なターゲット。減速比は19分の1、29分の1、59分の1の3タイプを用意する。

 特徴は①高剛性(変形のしにくさ)②高トルク(ねじりの強さ)③大きな中空径――の3つ。小型・中型ロボット向けには波動歯車機構を使った減速機が広く採用され、特定のメーカーが非常に高いシェアを持つ。これに対し、営業統括減速機営業部の岡本浩平RC営業課長は「波動歯車減速機よりも剛性とトルクを高め、差別化を図った」と話す。
 高剛性と高トルクを両立するため、競合メーカーが得意とする波動歯車機構ではなく「偏芯揺動型の差動減速機構」を取り入れた。

高剛性減速機の構造

 偏芯揺動型の差動減速機構とは、入力軸であるクランクシャフトの回転に沿って2枚の遊星ギアがインターナルギアの内側を公転しながら自転し、反力ピンを介して出力軸であるクロスローラーベアリングに動力を伝達する機構だ。遊星ギアは、インターナルギアとかみ合いながら回転する。両者の歯数差によって回転が減速され、トルクが生まれる。比較的大型サイズの減速機に使われる構造だが、同社は剛性やトルクの強化を狙って小型や中型サイズの減速機にあえてこの機構を採用した。

 減速機事業部開発二部の藤田智之RC開発一課兼二課長は「波動歯車機構は構成部品がたった3点しかなく、減速機を小型化できるメリットがあるため、これまで多くのロボットメーカーが使ってきた。だが、剛性面などで課題があり、ロボットメーカーからも『もう少し剛性が欲しい』との声が聞かれた。そこで、波動歯車機構の課題を解決できそうな新しいアプローチとして、偏芯揺動型の差動減速機構を採用した」と説明する。

中空径を大きく取り設計の自由度を高める

 大きな中空径も特徴で、競合メーカーの同じ外径の減速機と比べてワンサイズ上の中空径を確保したという。中空径が大きいほど、配線や配管、ドライブシャフトなどが通しやすく、ロボットの設計の自由度が高まる。

 しかし、中空径を大きくすると、その分剛性が低くなる。相反する要素を同時に満たすため、同社は開発時にさまざまなトライ&エラーを繰り返した。藤田課長は「わが社が長年培ってきた歯車の製造技術なども応用した。歯形を改良するなど、さまざまな工夫を取り入れて開発に当たった」と振り返る。

TOP