ロボット導入を円滑に! ITベンチャーが自動化の課題にメス/ファースト・オートメーション
2つのサービスを提供
ファースト・オートメーションは、ベンチャー企業などの活動を支援するインキュベーション施設「なごのキャンパス」内に本社を構える。20年9月創業のITベンチャー企業で、従業員数は今年27歳の伊藤社長を含めて7人だ。
「ITでロボットをもっと身近に」とのミッションの下、現在は主に2つのITサービスをSIerや機械商社、ロボットのエンドユーザーに提供する。
一つは、ウェブメディアの「ROBoIN(ロボイン)」。創業当初から運営しており、ロボットSIerの会社紹介などの情報を発信する。専用の問い合わせフォームを通じてエンドユーザーの自動化ニーズや課題をヒアリングし、最適なSIerを仲介するコンサルティングサービスも担う。
もう一つは、ロボット導入を円滑に進めるための仕様管理サービス「ROGEAR(ロギア)」だ。ロボットシステムの仕様や工程をウェブ上で一元管理できる他、関係者同士での情報共有もできる。
手戻りなくして業務負担を軽減
同社は、クラウド経由でソフトウエアを提供する「SaaS(サース、ソフトウエア・アズ・ア・サービスの略)」の形でロギアの事業を展開しており、利用できる機能や価格帯に応じて複数のプランを用意する。
昨年12月にサービスを始めたばかりだが、SIerや機械商社、エンドユーザーなど42社(22年6月1日時点)が既に利用しているという。
ロギアはロボットシステムの案件ごとに専用のページを作成でき、利用者がその案件の関係者を招待することで関係者全員に情報共有ができる仕組みだ。ロボットシステムの要件定義から仕様決め、設計、製造、納入後のアフターサービスまでの一連の工程の進捗(ちょく)状況をウェブ上で一元管理できる他、システム構築に必要な各種資料や打ち合わせの議事録、Q&Aの記録などもシェアできる。チャット機能もあり、メールや電話を使わなくてもロギア内だけで情報のやり取りが完結する。
ロギアが最も力を発揮するのは、要件定義や仕様決めの工程だ。
SIerとエンドユーザーは通常、ロボットシステムを導入する際に綿密な打ち合わせを重ねて仕様を確定していく。しかし、伊藤社長は「知識の量や質の差が原因で、SIerとエンドユーザーとの間で仕様認識のずれやコミュニケーションエラーが起こる。そのため、システムが完成するまでに多くの手戻りが発生していた」と現状を語る。
これに対し、ロギアでは利用者が質問項目に沿って情報を入力するだけで仕様書を作成できる。SIerもエンドユーザーも同じ認識を持った上で仕様を決定できるため、「言った・言わない」のコミュニケーションエラーを削減できる。ロボットシステムの導入が手戻りなく円滑に進み、SIerの業務負担の軽減にもつながる。
同社はロギアの機能拡張にも注力しており、今年4月には約500機種のロボットの情報が閲覧できるデータベース「機器選定機能」を追加した。スペックだけではなくオプションも掲載されているのが大きな特徴で、オプションの共有漏れを防ぐのに役立つという。
伊藤社長は「こうしたデータベースは国内では珍しい。今後はロボットだけではなく、付帯設備の情報も増やしたい」と意気込む。