[5日間の夏期集中講座vol.4]ここだけは押さえたい!産業用ロボットのきほんの「き」/ロボットの構成要素、導入フロー、コスト
3つの要素で構成される
3日目は産業用ロボットの主な種類を解説した。では、産業用ロボットを構成する要素には何があるのか?
基本的に①本体のアーム②制御用コントローラー③ティーチングペンダント――の3つの要素で産業用ロボットは構成される。
①のロボット本体のアームはマニピュレーターとも呼ばれる。内部には、アクチュエーターや減速機などが収納されている。アクチュエーターとはエネルギーを直線や回転の動きに変換する装置を指す。代表的なものにはモーターがあり、ロボットにも多くのモーターが搭載されている。
ロボットのモーターには一般的にサーボモーターが使われる。サーボモーターとは、エンコーダーと呼ばれる回転速度や角度を検出するセンサーなどを搭載したモーターで、高精度な位置決めや制御ができるのが特徴だ。サーボモーターを減速機と組み合わせて使用する。減速機は、歯車などを使ってモーターの回転数を落とす代わりに、より大きな力を出せるようにする装置だ。
②のコントローラーはロボットを制御する装置で、③のティーチングペンダントとはティーチング(ロボットに動作を覚えさせること)の作業時に使う機器だ。ティーチングペンダントでロボットに姿勢を覚えさせて動作プログラムを作成する。
ロボットを支える周辺機器
ロボット用の周辺機器も数多くある。代表的なものは以下の通りだ。
①エンドエフェクター
②力覚センサーやビジョンセンサーなどのセンサー類
③ロボット用架台や安全柵
④ジャケット(カバー)
エンドエフェクターはアームの先端に取り付けるユニットの総称で、グリッパー(ロボットハンド)などが該当する。エンドエフェクターを変えれば、ロボットは搬送や機械加工などのさまざまな作業をこなせる。
ロボットハンドは物をつかむためのエンドエフェクターで、空気圧で動かすタイプや電気で動かすタイプがある。
より人に近い高度な作業をロボットにさせたい場合は、各種センサーを使うのが望ましい。例えば、力覚センサーは力とトルク(ねじりの強さ)を測定でき、精密部品のはめ合いや繊細な研磨作業など、微妙な力加減が求められる作業がしやすくなる。
ビジョンセンサーはカメラと画像処理システムを組み合わせたセンサーで、位置決めせずに置かれた物をつかんだり、従来は人手に頼ることが多かった製品の目視検査をロボットに置き換えるには欠かせない。
また、架台とはロボットを設置するための台で、通常は架台の上にロボットが載る。その周辺を安全柵で囲い、人とロボットを隔離することで安全性を担保している。
設置環境によっては、湿気が多かったり液体がかかったり、粉じんが舞う中でロボットを動かさなければならない。多くの精密部品や電子部品が内蔵されたロボットにとって湿気や液体、粉じんは天敵であり、これらからロボット本体を保護するためにジャケットを装着するケースがある。また、熱や火花からロボットを保護したり、食品向けでは異物混入を防いで洗浄しやすくする衛生目的でジャケットを装着することもある。
ロボットシステムの構築はSIerに
産業用ロボットはそれ単体では使えない「半製品」と言われる。前ページで紹介したさまざまな周辺機器と組み合わせ、システムインテグレーション(システムとして構築すること)して初めて機能する。
生産技術部門が充実している企業であればロボットシステムの構築を自社でできる。しかし、システムの構想作りから設計、立ち上げまでをシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に委託することも多い。
SIerはロボットシステムの構築を手掛ける事業者で、日本全国に数多く存在する。それぞれの得意領域は異なり、多くのSIerが協力し合って一つのロボットシステムを構築するケースもある。
2018年7月には、SIerの業界団体であるFA・ロボットシステムインテグレータ協会(会長・久保田和雄三明機工社長)が日本ロボット工業会内に設立された。設立以来、会員企業数は右肩上がりで増え続け、20年7月7日時点でSIer会員177社、協力会員64社の計241社が会員に名を連ねている。
なお、ロボダイでも連載企画「SIerを訪ねて」でさまざまなSIerの取り組みを紹介しているので、こちらも参考にしてほしい。