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2024.11.14

名古屋で製造業の専門展が開催、自動化の主役は協働ロボット

名古屋市港区のポートメッセなごやで今年10月、「第7回名古屋ロボデックス」など複数の展示会が開催された。協働ロボットの導入支援サービスなど、人手不足に悩む製造業への多彩な自動化ソリューションが提案された。

協動ロボットを生かす

多くの製造業関係者が来場した

 「第7回名古屋ロボデックス」「第7回名古屋スマート物流EXPO」など合計11の専門展が名古屋市港区のポートメッセなごやで開催された。10月23日~25日の3日間で約2万7000人が来場した。
 
 ロボット関連の展示では、協働ロボットの導入支援サービスやソフトウエア、協働ロボットと周辺機器を組み合わせた自動化パッケージなどが注目を集めた。

協業を発表した京セラの森田隆三事業部長(=写真右)とUR日本支社の山根剛代表

 京セラは会期初日の23日、自社ブースでデンマークのユニバーサルロボット(UR、日本支社=東京都港区、山根剛代表)との協業を発表した。京セラが昨年11月から提供を開始した、人工知能(AI)や3Dカメラを活用して協働ロボットを知能化するクラウドサービス「京セラロボティックサービス」を、URの協働ロボットに対応させた。
 同サービスでは台湾のテックマンロボットに次ぐ2社目の協業だ。これにより、同サービスでURの協働ロボットを選択すれば、ユーザーはUR公認の周辺機器「UR +(プラス)」などを活用したロボットシステムを構築しやすくなる。協働ロボットや周辺機器はユーザーが別途購入する必要があり、同サービス自体は定額制のサブスクリプション形式で提供する。
 URの協働ロボットで、初年度に国内外合わせて50件のライセンス獲得を目指す。

IAや3Dカメラでワークの形状を認識してピッキングするデモ

 同サービスは京セラのエンジニアがあらかじめAIモデルを作成する。類似の形状であれば再学習なしでワーク(対象物)を認識できる。同社のロボティクス事業部の森田隆三事業部長は「本サービスでは協働ロボットのピッキングなどにAIや3Dカメラを活用しているため、積まれたワークの重なり方などの状況に応じて協働ロボットが自律的に動作できる。そのため、ロボットでの自動化が難しい変種変量生産などの現場でも使える」と語る。
 ブースでは、積み重なった複雑形状のワークをピッキングし、整列させて所定の位置に並べるデモを披露した。

仮想空間でJAKAの協働ロボットのプログラム作成からシミュレーションまでを実施

 輸入商社の進和(東京都北区、倪昌浩社長)は中国のJAKAロボティクスの協働ロボットを使ったさまざまなアプリケーション(応用事例)を紹介した。
 中でも注目を集めたのがソフト開発会社のヴィッツが今年6月に提供を開始した協働ロボット向けシミュレーションソフト「SF Twin Cobot (ツインコボット)2.0」だ。仮想空間に現実空間を再現する「デジタルツイン」の技術を活用し、遠隔地からでもパソコン上でオフラインティーチングができる。会場では、仮想空間でプログラムを作成し、JAKAの協働ロボットの動作をシミュレーションするデモを披露した。

 ヴィッツの担当者は「台湾のテックマンロボットやURなど幅広いロボットメーカーの協働ロボットに対応し、1つのソフトで複数の協働ロボットを同時にシミュレーションできる」と話す。

自動化パッケージを提案

 無人搬送車(AGV)メーカーの愛知機械テクノシステム(名古屋市熱田区、小川実社長)は主力製品の「CarryBee(キャリービー)」シリーズと協働ロボットの自動化パッケージシステムを提案した。ブースではこのシステムを活用したワークの脱着作業のデモを披露した。  
 協働ロボットと台車で構成されたユニットを、AGVが加工機の模型の前へ自動搬送する。円筒形状のサンプルワークを加工した後は「完成ワーク置き台」までユニットを運ぶ。加工機やワーク置き台にはそれぞれマーカーが付いており、ロボットアームの先端に搭載されたカメラでそれを読み取ることで高精度な位置決めが可能だ。
 また、デモでは円筒形状のワークの転がる特性を生かした「からくり機構」も紹介した。完成ワーク置き台のレールが傾き、別の搬送台車にワークが移動する。担当者は「からくり機構は電気やエアなどの動力が不要なため、自動化システムに低コストで組み込める」と話す。

  • 愛知機械テクノシステムはAGVと協働ロボットの自動化パッケージシステムを披露

  • 搬送台車(=写真右)の棒状のレバーが完成ワーク置き場(=写真左)のレバーを突くと、レールが傾いてワークが転がる

農業への活用も

 椿本興業椿本チエインの極小ローラーチェーン「Epsilon chain(エプシロンチェーン)」を動力伝達部品に使ったエンドエフェクターを紹介した。エプシロンチェーンは同社最小のローラーチェーンで、スプロケット(歯車)にコンパクトに巻き掛けられる。狭小スペースでも動力を確実に伝達でき、エンドエフェクターの小型化や軽量化に貢献する。
 担当者は「エプシロンチェーンはステンレス製のため、水がかかる環境でも使用できる。そのため、農作物の収穫ロボットのエンドエフェクターなどへの適用を見込める」と説明する。

  • エプシロンチェーンを使ったエンドエフェクター

  • エプシロンチェーンを1円玉と比べた場合の大きさ

2つのステーションで作業効率を向上

オートストアシステムが展示したフュージョンポート

 ノルウェーに本社を置くオートストアの日本法人、オートストアシステム(東京都港区、安高真之社長)は中部地方の製造業向けにロボット自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」をアピールした。
 目玉は、ピッキングステーションを2つ備えた入出庫用ポート「FusionPort(フュージョンポート)」。従来の標準的な入出庫用ポートはピッキングステーションが1つしかなく、「ビン」と呼ばれる専用コンテナを入れ替えるのに6秒ほどかかっていた。これに対し、安高社長は「ピッキングステーションが2つあればビンの交換時間を大幅に短縮でき、ピッキングの作業効率を格段に高められる」と述べる。
 この他、急速充電で長時間稼働が可能な大規模倉庫向けのピッキングロボット「R5 Pro」も紹介し、製造業関係者を中心とした来場者の関心を引いた。

(ロボットダイジェスト編集部 山中寛貴、平川一理)



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