外観検査をAIだけに頼らない!“あえて”リモート目視も取り入れる/リモートロボティクス×TDSE(1/4)
「外観検査を人工知能(AI)だけに任せても100%正しい結果を出せるわけではない」と、良品AI外観検査システム「TDSE Eye(アイ)」を設計、開発するTDSEの柴田敦新規プロダクト開発グループ長は明かす。精度を高めるためのAI学習には時間がかかるため、あえて目視検査も取り入れることを提案する。 そこで目を付けたのがリモートロボティクス(東京都港区、田中宏和社長)が提供する遠隔ロボット操作サービス「Remolink(リモリンク)」だ。AIが判断に困るもののみを目視で検査するため、精度を担保しながら検査作業の大半を自動化できるようになる。
幅広い分野で活用可能
TDSEはAIを活用した製品の開発や、ビッグデータとAIを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)のコンサルティングやソリューションの提供を主事業とする。2013年にITコンサルティング企業のテクノスジャパンの子会社として設立した。
TDSE Eyeは外観の異常検知に特化した最先端のシステム。創業以来多くの企業へAIソリューションを提供することで培ったノウハウを集めて開発し、22年11月に提供を開始した。電子部品や自動車部品、食品や飲料の異物混入など目視で異常を確認できるもの全てが検査対象に入るため、活用分野は非常に幅広い。立体形状の製品でも、カメラの設置箇所の工夫や産業用ロボットなどを使って検査対象の姿勢を変えられれば問題なく検査できる。
サブスクリプション形式(定額制)で、月額10万円から利用できるのも特徴。「顧客の要望に応じてAI外観検査システムを1から構築した場合、イニシャルコストが1000万円から2000万円ほどかかる。しかし、それをパッケージ化したことで、安価な導入を可能にした。AIは日々進化しているため、最新のアルゴリズム(計算方法)を使えるようサブスクリプション形式にし、最新の技術を常に利用できるようにした」と柴田グループ長は語る。
AIの真のメリットを知ってほしい
外観検査の種類は、目視検査とルールベース検査、教師あり学習のAIによる検査、教師なし学習(良品学習)のAIによる検査の4種類に大きく分けられる。
目視検査はさまざまな異常を人の目で一度に見つけられるのがメリットだが、判断基準が人それぞれ異なり、作業効率も作業者の数と経験に依存してしまう。製造業では人手不足が大きな課題となっており、人手を確保しにくい問題もある。
ルールベース検査は人がルールを設定し、それに従って判定するため、あらかじめ設定したルール以外の異常を検知することができない。
教師あり学習のAIによる検査は精度の高さは優れるものの、AIに学習させるために大量の異常データを集める手間がかかる。それに加えて学習していない異常は異常と判断できないため、さまざまな異常データを収集しなければならない。精度の向上に時間を要するため、構想から実装まで時間がかかることがボトルネックだった。
一方、良品学習によるAI検査は良品の画像データを基準とし、ワーク(検査対象品)の画像データとの差異から異常を見つけるため、異常データの収集は必要としない。メリットはそれだけでなく、これまで発生したことがない場所の傷や、めったに発生しない異常といったイレギュラーな事象への対応力が高くなる。
TDSE Eyeはこの良品学習AIを採用したため、良品の画像データをAIに学ばせるだけで異常検知ができるようになる。必要な画像データの枚数は良品の判断基準に合わせて用意すれば良く、明確に良品の基準を定めたものならばたった数枚で済んでしまう。
そのため、TDSE Eyeは教師あり学習のAI外観検査システムよりも構想から実装までにかかる時間を短縮でき、すぐに実戦投入できる。「TDSE Eyeは実装スピードの速さが真のメリットであることを知ってもらいたい」と柴田グループ長は強調する。