新規事業は「ロボット・自動化」、大手企業の展示に注目集まる/シャープ、DIC
工場物流の自動化を提案、AGVを多階層に/シャープ
テクノフロンティアは「モータ技術展」や「電子部品の材料展」など多数の小さな専門展で構成される。「工場内物流最適化展」には家電メーカーのシャープが出展し、「多階層ロボットストレージシステム」などが大きな注目を集めた。
多階層ロボットストレージシステムは、棚・パレット(荷役台)搬送タイプの無人搬送車(AGV)と昇降機構などを組み合わせたシステムだ。日本の倉庫は5.5m程度の天井高が多いが、棚・パレット(荷役台)搬送タイプのAGVでは床面から2m程度までしか空間を活用できず、保管効率が低いことが課題だった。そこで、多階層ロボットストレージシステムでは、保管スペースを2層以上にすることでこの課題を解消した。平置きと比べ、2層の場合で1.5倍の保管効率を実現する。
「ここまで大きなシステムを実際に動かして展示したのは今回が初。来場者からの反応はとても良い」とロボティクス事業統轄部の宮﨑篤史参事は話す。
各種機器の展示と合わせ、効率的な工場物流システムの構築を支援するコンサルティングサービスを提供することも発表した。自社工場で培ったノウハウを生かし、顧客工場のレイアウトや面積、部品保管量に合わせた工場物流システムを提案する。
コンサルティングサービスのみの利用も可能だが、ワンストップでシステムの導入からその後の保全まで支援できる。多階層ロボットストレージシステムの他、AGV上の棚から物を取り出す作業をサポートするピッキング・アシスト・システムなどさまざまな機器を組み合わせる。展示システムでは川崎重工業のロボット・デパレタイズ・システムも活用しており、他社の機器も必要に応じて最適に組み込む。
「AGVが到着してから昇降機のカゴを呼ぶのではなく、AGVが来るのに合わせてカゴを呼ぶなど、全体を最適制御できる。シャープが物流自動化事業に取り組んでいることを知らない人もまだまだ多いので、積極的にアピールして認知度を高めていきたい」と宮﨑参事は話す。
ハンドの爪にさまざまな機能を付与/DIC
テクノフロンティア内の「モーション・エンジニアリング展」には、印刷用インクの世界的なメーカーのDICが出展した。インクは添加剤を加えた樹脂の一種で、同社はインクの他にもさまざまな樹脂製品を展開する。近年は、新規事業としてロボット向けの樹脂部品の提案にも注力する。
ギアやベアリングなど複数の樹脂部品を提案したが、特に注目を集めたのが、多様な機能を付与したロボットハンドの爪だ。樹脂製の爪の表面に電子回路を印刷する、あるいはマイク素子などの機器を埋め込むなどして、爪に接触センサーや力覚センサー、導通センサー、温度センサー、マイクなどさまざまな機能を持たせた。柔らかい把持対象物(ワーク)を壊れないようにつかんだり、コネクターを挿入した時の「カチッ」という音を検出しながら作業するなど、さまざまな使い方ができる。
「別途センサーを取り付けるより圧倒的に安価に同様の機能を実現できる。化学のアイデアでロボットの性能向上を提案でき、試作からお手伝いできるので、ぜひお声がけいただければ」と同事業の担当マネジャーは話す。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)