[注目製品PickUp!vol.31]機械要素部品メーカーが誘導システムを開発したワケ【前編】/THK「SIGNAS」
開発したのは、誘導システム
磁気テープ式と自律移動型の「良いところ取り」を
IMT事業部長としてロボット事業を統括する星野京延常務執行役員は、「従来型のAGVと、AMRとも呼ばれる自律移動型搬送ロボット、双方の良い所を生かす誘導方式を目指した。生産現場でのAGVの弱点を解決する」と、SIGNASの開発意図を明かす。
人手不足により、世間では単純作業を自動化する機運が高まっている。工場や倉庫内の搬送作業もその一つだ。そこでAGVの利用が広がる。
市場で普及するAGVの多くは磁気テープを床面に張る誘導方式を採用。磁気テープを貼るだけで経路を指示でき、簡単に安定した走行ができる。また、数ある誘導方式の中でも磁気テープ式のAGVの導入コストは低価格で済む。
一方、経路が磁気テープ上に固定されてしまい、進路上に障害物があると停止してしまう。また、ほとんど凹凸のない床面でしか稼働できず、磁気テープがはがれて途切れると走行できなくなるため、床面の磁気テープの定期的なメンテナンスが必要だ。
また、自律移動式の搬送ロボットも普及しつつある。特に周囲の状況をレーザーセンサーやカメラで読み取り、自身の位置を特定しながら移動するSLAM(スラム)方式が人気だ。こちらは任意の経路を設定でき、障害物を回避しながら走行できる。
しかし、稼働前に経路を設定する教示作業が難しい。また、自身の位置を見失う場面も多い。つまり、自律的に経路を判断するのは理想的ではあるが、稼働は安定しにくい。そして何よりも導入時の費用が高額だ。
そこで同社は、①経路を容易に設定できる②磁気などの誘導テープが不要③障害物を避けるための一時的な経路変更が簡単――の3点の実現を目指した。そういった従来のAGVに足りなかった機能を付加した上で、安定した稼働を継続でき、低価格な誘導システムを開発した。それがSIGNASだ。
目印を起点に動作を変える
サインポストを動かすだけ
例えば、一般的な磁気テープ式のAGVではテープが途切れてしまうために溝を横断できないが、ベースマシンは50mm幅の溝まで問題なく横断できる。また、段差も10mmの高さまで乗り越えられる。
IMT事業部ロボット部の北野斉部長は「発表から1カ月ほどで、数十件の問い合わせがあった」と反響の大きさに驚く。
後編では開発の経緯や今後の展望を聞いた。星野常務執行役員は「今後の可能性は無限大」と話す。そのワケとは?
(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)
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