[SIerを訪ねてvol.55]中子のバリ取りや搬送に特化/松下工業
同業他社が顧客
松下工業は自動車メーカー向けに鋳造(熱で溶かした金属を鋳型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法)用の中子を製造する。中子は「なかご」と読み、鋳物部品の内部に空洞を作る際に鋳型にはめ込む砂型のことを指す。
同社は長年培ってきた中子製造の技術や自動化のノウハウを生かし、2016年ごろにSIer事業に本格参入した。
中子専業メーカーが手掛けるSIer事業なだけあり、同社が最も得意とするのは中子のバリ取りや搬送に特化したロボットシステムだ。そのため、同業他社の中子メーカーや中子を内製する鋳物部品メーカーがメインの顧客になる。松下晴彦専務は「最大の強みは中子や鋳物の専門知識を豊富に持っていること。一般的なSIerは中子を取り扱う機会はそう多くないが、わが社は自社で中子を製造しているため、お客さまからの要望を正確に理解した上で“かゆいところに手が届く”提案ができる」と語る。
専門部署の「ロボット事業部」には9人のエンジニアが在籍しており、中子に特化したロボットシステムの構想設計から機械設計、電気設計、ティーチング(動作を覚えさせること)、組み立て、調整、アフターサポートまでワンストップで対応する。
刃物をどう押し当てるか
中子の製造方式は複数あるが、日本の中子メーカーは同社も含め「シェルモールド法」を採用するケースが多い。シェルモールド法とは、300度近くに加熱した金型に「レジンコーテッドサンド(RCS)」と呼ばれる砂型用の材料を吹き付け、金型の熱でRCSを硬化させて中子を成形する方式だ。金型から中子を取り出す時に外周や穴などにバリが発生するため、中子の製造現場ではバリ取りの作業が欠かせない。
ロボット事業部の松下拓部長は「熱の影響でRCSが伸縮するため、中子の寸法もバリの形状も安定しにくい。そのため、バリ取りをロボットで自動化するには、こうした対象物にどう刃物を押し当てるかが重要」と話す。同社は実際に刃物をバリに押し当てた時の刃物のしなり具合などを丁寧に確認しながら、細かくティーチングポイントを設定することで、形状が不安定な中子のバリ取りを実現するという。
また、同業他社からは「既存の中子製造ラインの限られたスペースの中にロボットを組み込みたい」との要望が多く寄せられる。そのため、松下部長は「中子のバリ取りから搬送までの複数の作業を1台のロボットに担わせる場合でもハンドチェンジャーなどの付帯機器を使用せず、複数の機能を備えたハンドを独自設計するなどして、省スペースなロボットシステムを構築するよう心掛けている」と説明する。
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ロボットで中子のバリ取りを自動化する様子(提供)
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バリ取り用のティーチングをする様子(提供)