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2025.04.11

ヒト型ロボットが自動化の空白を埋める/アプトロニック、ボストンダイナミクス

産業用ロボットや搬送ロボットがさまざまな製造現場で活躍し自動化を進めているが、設置スペースや移動経路、作業内容などの課題から、自動化が難しい「空白地帯」が存在する。2足歩行をするヒト型ロボットは階段の昇り降りをしたり狭い通路も通ることができ、人と同じ動きができることからさまざまな作業内容に対応できる可能性を秘めており、自動化の空白を埋めると期待されている。フランスのソフトウエアメーカーのダッソー・システムズが今年2月に米国で開催したイベントで、ヒト型ロボットを手掛ける2社がヒト型ロボットの動向や展望を語った。

米国でヒト型ロボットの開発が進む

世界各国から集まったソリッドワークスのユーザーに向けヒト型ロボットの動向が語られた

 今年2月、フランスのソフトウエアメーカーのダッソー・システムズのユーザー向け年次イベント「3DEXPERIENCE World(3Dエクスペリエンスワールド)2025」が、テキサス州のヒューストンで開催された。ヒト型ロボットを手掛けるアプトロニックとボストンダイナミクスの創業に携わった2人のエンジニアがゲストとして登場し、ヒト型ロボットの動向や展望、ロボット開発のプロセスでダッソー・システムズのソフトが果たす役割などについて語った。

 アプトロニックとボストンダイナミクスは、ダッソー・システムズが提供する「3DEXPERIENCE(3Dエクスペリエンス)プラットフォーム」と、そこに含まれる3次元CADソフト「ソリッドワークス」を導入し、ロボットの開発に活用している。アプトロニックはテキサス州に本拠地を置き、ヒト型ロボット「Apollo(アポロ)」などを開発、製造する。マサチューセッツ州に本拠地を置くボストンダイナミクスは、4足歩行ロボット「Spot(スポット)」、物流ロボット「Stretch(ストレッチ)」、ヒト型ロボット「Atlas(アトラス)」の3つのプロジェクトを進めている。

ヒト型ロボと産ロボは補完し合う

アプトロニックのアポロは、高さや重さも人に近い

 「ヒト型ロボットと産業用ロボットは、互いに補完し合うことでマーケットを拡大させるだろう」と語るのは、アプトロニックの共同創業者であるルイス・センティス博士。今年2月13日にグーグルを含む投資家から3億5000万ドル(約520億円)を調達したことで話題となった。センティス博士は「今回の資金調達を元にロボットの量産に着手する」と話す。

 アポロは人のように自由かつ機敏に動くことができ、さまざまな運用に対応する。例えば、横から強く押すとよろけながら自らバランスを取り、2本の腕と多指ハンドを用いて人が持つように箱を抱えて持つことができる。しかし、センティス博士は「産業用ロボットのような位置決め精度や繰り返し精度は望めない。大型の産業用ロボットは自動車さえ持ち上げられるが、ヒト型ロボットがハンドリングできるのは、現状では20kg~30kgが限度だ」と話す。「これは、人が一人で持ち上げられるぎりぎりの重さでもある。繰り返し作業や可搬質量に強みをもつ産業用ロボットと、人に近い動きで人の代わりになれるヒト型ロボットは、補完し合ってシステムを高度化できる」と力を込める。

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