工場のデジタルデータを製品設計に生かす/安川電機
潜在的な課題を可視化
新設ラインの構想は21年12月から始まった。生産量を上げるために増設する必要があり、Σ-Xの発売を機に決定した。22年5月ごろから詳細設計や部材の発注などに着手。材料不足の問題がありながらも、今年3月に稼働した。
木谷文彦生産技術部長は「生産体制を刷新するのではなく、培ってきた技術をさらに進化させることをコンセプトに設計した。従来のラインをベースに、これまで集めたデータをどう生かすか考えた。設計に苦労したが、その分順調に稼働している」と振り返る。
工場内のデータを収集することで、潜在的な課題を洗い出せるという。タクトタイムを延ばす要因を一つ一つ解消し、数%でも生産性を高められるように取り組む。木谷部長は「現場で認識しづらい困りごとも、データを可視化すればどこに問題があるか分かる。データに基づいて生産阻害要因を特定し、現場にフィードバックする活動が定着してきた」と語る。
重要なのは現場と設計の連携
ソリューションファクトリの進化はこれらにとどまらない。次はエンコーダーの調整や試験のためのラインを増設する予定だ。渡辺工場長は「後工程も効率を高め、生産量をさらに上げたい」と意気込む。工場の自動化を進めるためには、現場と設計が一体になり取り組む必要があるという。「かん合工程の自動化で製品の設計変更をしたように、現場のデータを設計に反映することで適切な生産体制を構築できる。次の製品に向けて、設計をより良くするためのデータも準備している」と渡辺工場長。
今後は新設ラインに取り入れた要素を、従来のラインに適用することも狙う。渡辺工場長は「ソリューションファクトリの建設前から入間事業所にある第1、第2工場は、稼働して60年ほどたつ。設備の老朽化もあり、将来的にはそこも改善していければ」と展望を語る。
(ロボットダイジェスト編集部 水野敦志)
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