[注目製品PickUp! vol.76]「静電容量式」の力覚センサーを協働ロボ用に/ワコーテック「WKF-Cシリーズ」
大幅なコストダウンを実現
WKF-Cシリーズは、ワコーテックの力覚センサーのブランド「DynPick(ダインピック)」の新製品として2024年9月に発売した協働ロボット用の6軸力覚センサーだ。多くの協働ロボットに採用されるフランジ(取り付け用のつばの部位)規格「ISO 9409-1-50-M6」に適合しており、ロボットアームに力覚センサーを直接装着できる。微小な力を検知できるため、精密さが求められるはめ合いや組み付けなどの自動化に役立つ。また、協働ロボットで広く使われる「RS485」をはじめとした数多くの通信インターフェースにも対応する。
同社の力覚センサーはWKF-Cシリーズも含め、静電容量式を全製品共通で採用しているのが最大の特徴だ。静電容量式では、平行に配置した2枚の平板状の電極を使用する。片側の平板に力が加わった時に生じる静電容量の変化を計測することで、力の大きさを検知する仕組みだ。
加速度センサーの技術を応用して力覚センサー市場に
静電容量式は、車の衝突検出やスマートフォン向けの加速度センサーにも使われる。岡田社長は3軸加速度センサーの発明者として知られ、加速度センサーやジャイロセンサー、力覚センサー、発電素子などの特許が全世界で約450件も登録された。
現在は加速度センサーやジャイロセンサーの分野でライセンスビジネスを展開するワコー(埼玉県上尾市)と、力覚センサーの開発や販売に特化したワコーテックの2社を経営する。岡田社長は力覚センサー市場への参入経緯について「特許権の有効期間は20年で終了するため、メーカーとして安定的な収益を確保する目的で07年にワコーテックを設立した」と話す。
ひずみゲージ式が主流だった力覚センサーの分野に静電容量の技術を応用すれば、新たな市場を開拓できると考えた。「実は加速度センサーの分野でも黎明(れいめい)期にはひずみ式の検出方式があったが、市場規模が5000億円を超えた現在は消滅した」と説明する。
設立翌年の08年には力覚センサーのサンプル品の出荷を開始し、その4年後の12年には富山県高岡市に富山工場を設立して本格的な量産を開始した。
岡田社長は「力覚センサーの検出方式に静電容量式を採用しているのはわが社だけ。静電容量の検出方法が難しいことに加え、静電容量の技術は特許で押さえているため、競合他社は作りにくい」と述べる。富士経済の調査によると、同社の6軸力覚センサーの国内シェアは8割~9割にも上るという。
プラグ&プレーに向けて
同社はこれまで、非協働型の一般的な垂直多関節ロボット用の力覚センサーを中心に製品ラインアップを広げてきたが、近年の協働ロボットの市場拡大を受けてWKF-Cシリーズを新たに開発した。
その第一弾として、10kg可搬の協働ロボット向けの「WKF-C-6A200-15-QFD」を23年12月の「2023国際ロボット展(iREX2023)」に参考出展し、24年9月から本格的に販売を始めた。協働ロボットに装着すればすぐに使える状態になる「Plug&Play(プラグ&プレー)」の実現に向け、まずは国内外の協働ロボットメーカーへのアプローチを強化する構えだ。年間で8000万円の売上高を目指すという。
製品開発にも余念がなく、高可搬の協働ロボット向けの新製品「WFK-C-6A500-40-QFD」を25年度中に発売する計画も立てている。直線の3軸の定格荷重(Fx、Fy、Fz)が500N(ニュートン)、各軸周りのモーメント(=回転させようとする力、Mx、My、Mz)が40Nm(ニュートンメートル)だ。
また、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)への提案にも力を注ぐ。パートナーSIerの1社であり、自動車産業向けの協働ロボットシステムの構築に強みを持つトエックジャパン(愛知県豊田市)の奥村鉄社長は「最近は協働ロボットを活用した高度なアプリケーション(応用事例)開発の案件が増えている。力覚センサーは移設しやすい協働ロボットと親和性が高く、今後の成長ポテンシャルが大きい」と期待を寄せる。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)