生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2025.01.16

連載

[連載コラム:いまさら聞けないキーワード]vol.10 食品仕様【前編】

最近よく聞く言葉だけど、「それどんな意味?」と聞かれたら自信を持っては答えにくい――。そんな言葉はありませんか? 新連載コラム「いまさら聞けないキーワード」では、そんなロボット業界のキーワード・新ワードを紹介します。今回のキーワードは、人手不足や品質管理が厳しさを増す食品工場向けに求められる「食品仕様」です。vol.10と11の2回にわたり、ちょっと詳しめに解説します。

 食品製造業界では、HACCP(ハサップ、危害分析重要管理点)に基づいた衛生管理が2021年に義務化されるなど、取り巻く環境は厳しさを増しています。しかし、基準や規制がどれだけ厳しくなろうと、人手の作業が多ければ毛髪や意図しない菌などの混入を完全に防ぐことは不可能です。人手不足も深刻化しており、人手に代わりさまざまな作業を担う設備としてロボットが注目されています。

 ただ、人が口にする食品を取り扱うだけに、食品製造の現場で使うロボットシステムには他の業界とは異なる基準や規制があります。食品製造の現場にロボットを導入すると、毛髪などの混入は防ぎますが、ロボットにはロボットのリスクがあります。例えば、はがれ落ちた塗料や潤滑油などが混入するかもしれません。そのまま消費者に届いてしまった場合、健康被害やクレームなど大きな事故につながります。

食品製造業界への対応に特化したSIerもある

 そうしたリスクに対しノウハウを持つシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)は限られますし、ユーザーがロボットシステムの操作に不慣れであるケースも多いでしょう。食品製造のロボット化を後押しするため、農林水産省は今年4月に「食品製造現場におけるロボット等導入及び運用時の衛生管理ガイドライン」を公開しました。食品製造向けのロボットシステムの開発や運用のポイントを解説しており、要チェックです。

 そもそも、食品製造の工程では水や酸・アルカリの薬剤を使う場面が多く、高温・低温環境もあるなど、精密機器であるロボットにとり本来好ましい環境ではありません。そのような環境で問題なく稼働し、かつリスクを極力抑えるには、どのような仕様が求められるでしょうか。
 次回は、具体的な「食品仕様」についてもう少し詳しく解説します。

TOP