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2025.01.20

連載

[活躍するロボジョvol.36]近隣住民との触れ合いが活力に/ZMP イレム・ウィグルさん

自動搬送ロボットなどを開発、販売するZMP(東京都文京区、谷口恒社長)のイレム・ウィグルさんは、ロボットエンジニアとして自動走行技術の開発を手掛ける。自動走行で重要な自己位置を認識する技術の調整も担当しており、停止位置の精度向上などを実現した。ウィグルさんは「公道で走行実証をしていると、ロボットに興味を持った子どもたちの反応を見られるのがうれしく、開発に力が入ります」と話す。

自動走行技術の要を受け持つ

 ZMPは自動走行技術に強みを持ち、自律走行型搬送ロボット(AMR)などを製造する。ウィグルさんの主な業務は自動走行技術の改善や検証、新機能の開発など。中でもAMRの動作において重要な、自己位置の認識技術の調整も受け持つ。
 同社のAMRは、レーザーを周囲に照射し自己位置を認識する「LiDAR(ライダー)」方式を採用しており、ウィグルさんはその精度向上に取り組む。人を乗せて自動走行する「RakuRo(ラクロ)」や自動運転で物を運ぶ「DeliRo(デリロ)」、自動で巡回警備する「PATORO(パトロ)」、屋内と屋外の両方での高精度な走行制御を実現した。

ZMPでロボットの自動走行技術の開発などを手掛けるイレム・ウィグルさん

 公道で自動走行ロボットの実証実験をする場合は、道路交通法が定める安全基準を満たす機体でなければならない。ラクロを含む3機種はその安全基準の認証を取得しており、ウィグルさんも路上でたびたび検証をする。オフィスの周囲でラクロを動かしていると、自然と近隣住民との交流も増える。
 「ラクロに興味を持った子どもたちに囲まれることもあります。わが社はロボットを通じた社会への貢献を目指しているので、直接反応を見られるのはうれしく、開発にも力が入ります」と笑顔を見せる。

日本で最先端のロボット研究を

自動運転で物を運ぶ「デリロ」

 ウィグルさんはドイツのミュンヘン工科大学の修士課程で、ロボット工学を専攻した。当時は自動走行技術だけでなく、ロボットアームやドローンの動作制御なども研究対象だった。学生向けのコンテストにチームで出場し、ロボットアームを使ったピック&プレースなどを競う種目で優勝経験もあるという。
 また在学中にドイツ航空宇宙センター(DLR)で研究助手を務め、宇宙空間で稼働するロボットの研究にも携わった。

オフィスの近くでラクロの走行実証をする

 ドイツで実践的な経験を積んだウィグルさんは修士課程の修了後、2017年に国費外国人留学生制度を利用し、東京大学大学院の博士課程に進んだ。専攻は工学系研究科精密工学専攻だ。「日本に来たのは、博士課程のプログラムに魅力を感じたから。ドイツでは授業の補助など研究以外の仕事もカリキュラムに含まれるのに対し、日本では最先端の研究に専念できるのが決め手でした」と振り返る。

 東京大学で研究に励む中、21年にはアルバイト社員としてZMPの開発チームに加わり、同年に博士課程を修了してそのままZMPへ入社した。「ZMPは搬送用ロボットや警備用ロボットなど多彩な製品とそれに関わるプロジェクトがあり、多くのことを学べる環境」とウィグルさんは言う。

 ZMPは社員同士のチームワークが良く、働く環境としても良いという。「日本に来たばかりの頃は、周囲とのコミュニケーションに難しさを感じる時もありました。ですがZMPは海外出身の社員も多く国際色豊かな企業のため、文化や言語の壁も感じずとても働きやすいです」と話す。

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