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2025.01.17

連載

[ショールーム探訪vol.33]本物の物流倉庫で本番さながらのデモ/Phoxter「R&Dセンター」

物流の自動化システムを展示するなら、本物の物流倉庫が一番だ。リアリティーが違う。Phoxter(フォクスター、大阪府豊中市、園田淳一社長)のR&Dセンターは、大阪府茨木市の真新しい物流施設「LOGI’Q(ロジック)南茨木」にある。名前の通り開発拠点だが、本物の物流倉庫の条件でデモンストレーションが見られるショールームでもある。物流施設を所有する東急不動産や通信機器を提供するNTTコミュニケーションズの協力で実現した、地の利を生かしたショールームの様子をお届けする。

開発拠点とショールームを兼ねる

 近畿の高速道路網において吹田インターチェンジは、大阪市内にも大阪府外にも通じる交通の要衝だ。そこから3km圏内。近畿自動車道と、JR京都線と阪急京都線の線路に囲まれた一帯には、大きな工場や物流倉庫が立ち並び、住宅地として人気の高い大阪府北部の北摂地域では珍しい光景が広がっている。東急不動産が所有するロジック南茨木は、同地域に2024年1月にしゅん工したばかりの新しい物流施設だ。

  • グーグルマップで見たロジック南茨木を見ると、大きさがよく分かる

  • 真新しいロジック南茨木の玄関。ロゴデザインもモダンだ

 フォクスターは同年9月17日、ロジック南茨木の倉庫スペースの一画にR&Dセンターを開設した。同社は、中国のHIKROBOT(ハイクロボット)やZIKOO(ジクー)を中心とする各種搬送ロボットを活用したソリューションを、製造業や物流業界向けに提供するシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)であり、自社製の自律走行型搬送ロボット(AMR)の開発に取り組むロボットメーカーでもある。同センターは同社にとり初めての開発専用の拠点で、ショールームとしての機能も持つ。

物流自動化のデモをフルラインアップ

 同センターは物流倉庫を仕切った一角にある。立体倉庫が置ける高い天井、実際の物流の現場のトラックバース。足を踏み入れた記者が感じたのは、ショールームというよりもロボットユーザーの現場を訪ねた時の印象に近い。センター内には荷下ろしから検品、入出庫、出荷に至る自動化システムが円を描くように配置され、コンパクトながら倉庫内物流の全体像をつかみやすい。

 ハイクロボットの無人搬送車(AGV)やAMR、カートンを立体倉庫に出し入れするカートン搬送ロボット(CTU)など、物流倉庫で使用する各種ロボットを設置。検査工程で使用する協働ロボットもテストのために置いている。これらの設備を使い、顧客の現場に合わせたシステムやプログラムを開発するのが同センターの本来の役割だ。また、開発中の自社製AMRの完成度を高める機能も担う。将来的にロボットメーカーへの脱皮を図る方針の表れだ。搬送ソリューション事業部の矢部秀一さんは「独立した開発拠点を持つことは念願だった」と話す。

 そして、取り扱うロボットの多くを導入した同センターを、PRに活用しない手はない。営業活動の一環として顧客を招き、デモンストレーションを披露するのだ。「従来は本社内の一室で動かす程度のデモしかできなかったが、本番に近い環境でロボットの動きを見てもらえる」と話し、ショールームとしてのPR効果に期待を寄せる。

  • 写真左側の立体倉庫でピッキングされ、奥から右側の出荷エリアに工程が流れる

  • トラックバースの下には無人搬送フォークリフト(AGF)も

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