既存ラインを変えずに協働ロボットを導入/ファナック 山口賢治 社長兼CEOインタビュー
――自社のロボットを積極的に社内でも使っているのですね。
ロボットに限らず自社商品を積極的に活用しており、部品加工に使う工作機械のメーカーはさまざまですが、当然ながらNC装置はファナックで統一しています。その他、自社製のNC装置(パワーモーションを含む)やモーターも自動倉庫のスタッカークレーンやモーターの巻き線機などに使っています。長く使うものですから将来「保守部品がもうありません」と言われたら困りますので、自社製品を使うことでそういった事態を防止します。ファナックのサーボモーターは加減速に優れるため、スタッカークレーンを高速に動かせ、生産性向上にもつながります。
――デジタル技術の活用はいかがですか。
自社開発のIoTシステム「FIELD system Basic Package(フィールド・システム・ベーシック・パッケージ)を使い、各設備の稼働状況の監視や稼働時間の分析などをしています。部品の寸法測定ではOK・NGだけでなく、狙った数値からどちら側にずれているかの傾向も把握し、NG品が出る前に対処できるようにしています。ねじ締め時のトルクなども管理し、チョコ停(短時間の設備停止)が発生しにくい体制を整えています。
――これまでは御社の生産体制についていろいろとうかがってきましたが、顧客向けの提案は?
人手不足は製造業全体の課題ですから、既存の生産ラインのレイアウトを変えずに導入できる協働ロボットの潜在需要はとても大きいと考えています。また、フィールド・システム・ベーシック・パッケージも効果的で、生産状況の可視化ができればその先の改善も可能になります。どちらも「導入しやすさ」を意識した商品で、既存の生産ラインに後付けでも導入できます。大企業だけでなく中小企業でも活用が少しずつ広がっており、一層の普及を図ります。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集長 八角 秀)
山口 賢治(やまぐち・けんじ)
1993年東京大学大学院修士課程修了、ファナック入社。2003年MT本部長、07年本社工場長、08年専務(工場統括)、12年副社長、16年社長兼最高執行責任者(COO)FA事業本部長、19年4月から現職。福島県出身。1968年生まれの56歳。