[ショールーム探訪 vol.35]現場のニーズに応える技術の発信地/近藤製作所「坂本工場ショールーム」
製品や技術を集約
愛知県蒲郡市は本州のほぼ中心に位置し、みかんの生産量が県内一を誇る。東名高速道路の音羽蒲郡インターチェンジから車で約15分。みかん畑が広がる田園地帯の一角に近藤製作所の坂本工場はある。
同工場はFAシステム事業の中核を担い、主に大型の自動化ラインの構築に取り組む。昨年6月には、同工場の2階にあったロボットの動作検証を実施するテストルームをショールームとしてリニューアルした。
橋本和樹取締役部長は「従来は顧客の希望があれば、目的に応じて各事業部門の生産拠点を個別に案内していた。しかし、それでは事業部門ごとの技術のつながりや、製品が生まれた背景を体系的に伝えるのが難しかった。わが社の技術を包括的に理解できる場を作るため、坂本工場のショールームに各事業部門の製品や技術を集約した」と語る。
3つのエリアに分かれる
ショールームに足を踏み入れると、まず目に入るのは、壁一面に描かれた同社の歴史を伝えるパネル展示だ。製品や技術の進化が入り口から順に時系列に沿って詳しく解説されており、見学者はその歴史をたどれば、どのようなニーズからその製品が生まれたのかを理解できる。
橋本取締役は「それぞれの見学者が抱える課題と照らし合わせながら、『この技術を使えば解決できるかもしれない』と考えるきっかけにしてほしい」と話す。
こうして製品や歴史への理解を深めてからショールームの奥に向かうと、「自動車部品」「FAシステムとスマートファクトリーLabo(ラボ)」「ハンド&チャック ロボット周辺機器」の3つのエリアが見学者を迎えてくれる。各エリアには、事業部門ごとの技術やソリューションが実機とともに展示されている。
特に印象的だったのは、「FAシステムとスマートファクトリーLabo」のエリアだ。ここでは、ロボットを使った自動化システムが数多く展示されており、その中でもひときわ目を引かれたのが、工作機械向けの自動化キット「ロボキット」と協働ロボットを搭載した移動式の「ロボ台車」だ。どちらもコンパクトな設計だが、同社が自社の生産現場で培った工夫と技術が詰まっている。
ロボキットは固定型の自動化システムで、工作機械の前面などに据え置いて使用する。ショールームでは、ワーク(被加工物)をストッカーにセットすると、ロボットが自動でワークをピッキングするデモを実施している。また、ストッカーとロボット架台を固定するロックを解除すると、ロボット架台部分のみを動かせるため、切削工具などを交換する作業エリアを容易に確保できる。
一方、ロボ台車はロボキットとは異なり、設置場所を柔軟に移動できるのが特徴だ。ショールームには、ロボ台車と自社製の棚型ストッカーを組み合わせたワーク自動搬送システムとして展示している。協働ロボットがストッカーの引き出しを開閉し、ハンドチャックを交換した後、ストッカーに置かれた箱からワークを取り出して工作機械に供給する。加工後は再びワークをストッカーの箱に戻す流れだ。2次元カメラとランドマーク(認識用マーク)を活用しており、ロボットが工作機械側のランドマークを読み取るだけで、簡単に位置補正ができるという。
橋本取締役は「『頻繁に起こる段取り替えや生産量の増減に対する稼働時間の変化に迅速に適応したい』というわが社の自動車部品工場のニーズや、今まで自動化が出来なかった多品種生産を主とする中小企業などのニーズを基に、ロボキットやロボ台車を開発した」と説明する。