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2024.03.14

大型ワークのバリ取りでアルミダイカスト市場に挑む/FINESYSTEM

バリ取りの作業を自動化する各種システムを設計、製造するFINESYSTEM(ファインシステム、愛知県豊田市、大羽達也社長)は今年2月、アルミダイカストや鋳物、鋳造品などの大型ワーク(加工対象物)のバリ取りに対応する高トルク型エア・フロート・アタッチメント「AF150型」を発売した。同社は顧客に納入する前に必ずテストをする体制を構築しており、アルミダイカスト市場への導入実績も豊富だ。今回発売したAF150型を通じ、アルミダイカスト市場へのさらなる拡販を目指す。

空気圧をコントロールする

ワークに沿いながらバリ取りをするエア・フロート・アタッチメント「AF型」の動画(FINESYSTEM提供)

 バリとは、金属などを加工した際に発生する余分な突起物のことで、従来は人が手作業で除去してきた。ファインシステムは、そのバリ取り作業の自動化に特化したシステムを設計、製造する。
 同社のコア技術は、自社開発したバリ取り専用のエア・フロート・アタッチメント「AF型」だ。
 今年2月に発売した高トルク型エア・フロート・アタッチメント「AF150型」を含め、全部で6タイプをそろえる。AF150型はアルミダイカストや鋳物、鋳造品などのバリ取りに対応する。中型ワーク対応の「AF110型」を改良したモデルで、従来は対応しきれなかった大型ワークのバリ取りができる。

 AF型とは、バリ取り工具をつかんで前後左右に傾動・伸縮できる「エアフロート機構」を備えたユニットで、空気圧でバリ取り工具を一定の力で押し付けながらバリを取り除く。
ロボットは良くも悪くもプログラミングされた軌跡に沿って動くため、ワークの形状にばらつきがあるとバリ取り工具がワークに当たらず、バリが十分に取り切れないとの課題があった。一方、エアフロート機構を備えたAF型は、ワークの形状に倣ってバリ取り工具を傾けたり伸縮させたりできるため、ワーク形状のばらつきを吸収しながらバリを除去できるのが特徴だ。
 また、従来はバリ取り工具を強く押し当てたい地点ごとにロボットの位置を教示する必要があり、その設定地点が多いほどロボットが加減速を繰り返すためバリ取りに時間がかかっていた。しかし、AF型はワークの材質に合わせて空気圧をコントロールすればバリ取り工具を押し当てる力を簡単に調整できるため、煩雑なティーチング(動作を覚えさせること)が不要になり生産性が向上する。

 大槻浩司取締役開発部長は「競合のバリ取り用ユニットはバリを確実に取ることを前提に設計しているため押し付け力が強く、小さいバリだと削りすぎてしまう。AF型のエアフロート機構は『人間が手作業でやるように柔らかい力でバリを取る』ことをコンセプトに開発したため、バリだけをうまく取れる」と説明する。

納入前に必ずテストを

新製品の高トルク型エア・フロート・アタッチメント「AF150型」

 同社の営業担当者が大手自動車メーカーを訪問した際、加工機にバリ取り工具を取り付けて大型ワークのバリ取りをする現場を目にした。加工機でバリを取る場合、ワークをえぐったり、逆にバリ取り工具がワークに届かないなど、品質を均一に保てないことが課題だと分かった。これを受け、同社は大型ワークのバリ取りに対応するAF150型を開発し、その大手自動車メーカーに納入した。でき上がりの品質も良く、現場からは喜ばれたという。

 アルミダイカストのワークは形状や大きさが1つ1つ違うが、AF型なら製品形状に合わせてエア圧を変えるだけでバリだけをきれいに除去できる。「わが社の技術とホルダーがあれば、ギガキャスト(従来は複数に分かれていた車体部品を一体成形する技術)にも対応でき、大物アルミダイカスト品のような大型ワークでもバリ取りができると全国に広めたい」と大羽社長は語る。

左から小笠原英城取締役部長、大羽達也社長、大槻浩司取締役

 同社は顧客にバリ取りシステムを納入する前に必ずテストをする体制を構築しているのも特徴だ。
 大羽社長は「テストの件数は年間で130件ほどに上る。ロボットでのバリ取りがまだ一般的ではない中で、納入前には必ずテストし、顧客に安心して設備を導入していただけるのが強み」と胸を張る。
                       (ロボットダイジェスト編集部 山中寛貴)

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