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2025.03.19

[SIerを訪ねてvol.54]車の自動塗装の難しさとは/大気社

大気社はビル空調と産業用空調、塗装システムを主な事業領域としており、自動車の塗装工場のエンジニアリング企業としては国内トップシェアを誇る。自動車の塗装工程ではロボットや周辺機器が多数稼動する上に、塗装の品質を高く仕上げるためには膨大なパラメーターを管理しなければならない。70年以上も自動塗装を手掛けてきた同社は今後、その経験を生かして塗装以外の領域の自動化も狙う。

調整する要素が非常に多い

 大気社は自動車メーカー向けに、塗装工場の設計、施工を手掛ける。国内ではトップシェアを誇り、世界でもトップクラスの売上高という。国内外に広く事業を展開しながら、車体塗装ロボットのインテグレーション技術を培ってきた。
 車体は複数の工程に分けて塗装するが、生産効率を上げるため各工程に割ける時間は短い。オートメーション事業所の野阪英嗣技術部長は「生産量にもよるが、車体が1つのエリアにとどまる時間が1分以下のケースもある。そのためロボットの台数を増やして処理量を上げる必要があるが、ロボットが増えればそれだけ動作設定の難度も上がる」と語る。

 さらに、自動塗装の特有の難しさは「調整すべきパラメーターが非常に多いこと」と言う。ロボットの動作だけでなく、塗装機との連携や工場内の温湿度、気流、塗料の状態など、塗装の仕上がりに影響する要素は多岐に渡る。「ロボットが設定通りに動いたとして、必ずしも塗装の仕上がりが良くなるとは限らない。空調制御技術やさまざまなノウハウがあるわが社だからこそ、調整すべきパラメーターの多い塗装でも最適な自動化を実現できる」と野阪技術部長は自信を見せる。
 加えて同社は環境対応技術にも優れ、塗装は一般的に二酸化炭素排出量の多い工程だが、環境負荷を抑えながら生産性の高い自動化ラインを構築できる。

新工場にはロボット100台超

車体の塗装には多数のロボットを要する

 自動塗装の工程を大まかに分けると下塗り、清掃、中塗り、上塗り、検査となる。車体の内側も外側も塗装しなければならないため、各工程では塗装用のロボットの他に、ドアの開閉や自動車パーツの保持用のロボットも必要になる。周辺機器として、被塗装物の位置認識用にビジョンセンサーを使う場合もあり、それら全てをセットアップして自動化ラインが完成する。
 「新工場の立ち上げの際に、100台を超えるロボットを導入することもある。現地での据え付け前に、わが社のラボでは塗装テストを、仮組み場ではシステムチェックをして十分な出荷前検査を行うが、現地で完成品に仕上げるにはやはり時間がかかる」と野阪技術部長は言う。

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