[SIerを訪ねてvol.54]車の自動塗装の難しさとは/大気社
調整する要素が非常に多い
大気社は自動車メーカー向けに、塗装工場の設計、施工を手掛ける。国内ではトップシェアを誇り、世界でもトップクラスの売上高という。国内外に広く事業を展開しながら、車体塗装ロボットのインテグレーション技術を培ってきた。
車体は複数の工程に分けて塗装するが、生産効率を上げるため各工程に割ける時間は短い。オートメーション事業所の野阪英嗣技術部長は「生産量にもよるが、車体が1つのエリアにとどまる時間が1分以下のケースもある。そのためロボットの台数を増やして処理量を上げる必要があるが、ロボットが増えればそれだけ動作設定の難度も上がる」と語る。
さらに、自動塗装の特有の難しさは「調整すべきパラメーターが非常に多いこと」と言う。ロボットの動作だけでなく、塗装機との連携や工場内の温湿度、気流、塗料の状態など、塗装の仕上がりに影響する要素は多岐に渡る。「ロボットが設定通りに動いたとして、必ずしも塗装の仕上がりが良くなるとは限らない。空調制御技術やさまざまなノウハウがあるわが社だからこそ、調整すべきパラメーターの多い塗装でも最適な自動化を実現できる」と野阪技術部長は自信を見せる。
加えて同社は環境対応技術にも優れ、塗装は一般的に二酸化炭素排出量の多い工程だが、環境負荷を抑えながら生産性の高い自動化ラインを構築できる。
新工場にはロボット100台超
自動塗装の工程を大まかに分けると下塗り、清掃、中塗り、上塗り、検査となる。車体の内側も外側も塗装しなければならないため、各工程では塗装用のロボットの他に、ドアの開閉や自動車パーツの保持用のロボットも必要になる。周辺機器として、被塗装物の位置認識用にビジョンセンサーを使う場合もあり、それら全てをセットアップして自動化ラインが完成する。
「新工場の立ち上げの際に、100台を超えるロボットを導入することもある。現地での据え付け前に、わが社のラボでは塗装テストを、仮組み場ではシステムチェックをして十分な出荷前検査を行うが、現地で完成品に仕上げるにはやはり時間がかかる」と野阪技術部長は言う。