ロボットが金属を削る! 主催者企画が示す加工の新たな可能性/メカトロテックジャパン2019
3つの世界初
この切削加工システムには3つの世界初披露がある。
一つ目は、トライエンジの要望に応え、安川電機が開発した高剛性ロボット「MOTOMAN-GG250」だ。外力に強い構造で、これまでロボットの弱点だった低いたわみ剛性による加工精度の低下を解消する。
二つ目は切削工具。ロボットによる加工は、工作機械に比べて遅いが、切削条件を整えることで速くできる。そしてさらに加工速度を上げるのに重要なのが切削工具だ。
会場ではイワタツールがロボット用に開発した切削工具を初披露する。粗加工から仕上げ、面取り加工を一本ででき、汎用の工具を使用した時に比べて2倍の速度で加工できたという。「まだ切削工具にも改善の余地はある。さらに突き詰め、MECTではさらに倍の速度を実現したい」とイワタツールの岩田社長は意欲を見せる。
最後はロボットの先端に小型のロボットを取り付けた「ロボットオンロボット」だ。先端の小型ロボットにノズルを持たせ、刃先などに切削液をかける。加工の向きに合わせ、最適な位置にノズルが移動する。会場ではCFRPを削るため、バキュームを取り付けて粉じんを吸引する。全貌は会場で明かされる。
専用機に代わり部品を削る
トライエンジがロボットでの切削加工に取り組み始めたのは2015年のこと。顧客からの要望もあり、ロボットの使用用途が広がることを考えてスタートしたという。
「ロボットに切削なんてできない」
当時は周囲からそう言われた。工作機械に比べて剛性面で劣るロボットは、加工時の振動やたわみが発生しやすい。そのため、工具の刃が欠けてしまうこともあった。「取り組み始めた時には、激しく振動して慌てた」と岡部長は振り返る。
加工条件やシステムの見直し、剛性の高いロボットを選択するなどして、実用段階になったのが2年後の17年のことだった。
導入実績もある。ある自動車部品メーカーの米国工場では、フロントバンパー内部の部品の「バンパーレインフォース」を加工する時に使われている。被削材は1400~1600mmの幅があり、両端が折れ曲がった形状のため、これまでは全車種用に専用機を購入したが、ロボットならいろんな車種の加工に対応できると導入されたという。
「まだ十分に認知されていない。広がりはこれから」と岡部長は予想する。
CZにはロボット切削の他にも、加工現場のヒントになる提案や実演を用意。従来の産業用ロボットのイメージがガラリと変わる空間になるだろう。
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)
※この記事の再編集版は「月刊生産財マーケティング」2019年9月号でもお読みいただけます。