新ブランドで自社技術を分かりやすくPR/ジェイテクト
自社展でタクティカを披露
ジェイテクトは、1921年に創業した光洋精工と、トヨタ自動車の工機部門が独立して1941年に誕生した豊田工機の2社が合併して2006年1月に発足した。
現在は、ステアリングと呼ばれる自動車の足回り部品を製造する「ステアリング事業」、自動車の駆動部品を製造する「駆動事業」、各種機械の回転軸を支える要素部品であるベアリングを製造する「ベアリング」事業、工作機械や制御機器を製造する「工作機械・メカトロ事業」の4つの事業を展開する。
今回、「TAKTICA(タクティカ)」という技術ブランドを発表したのは、工作機械・メカトロ事業だ。
同社は、熱変位(熱の影響で機械の構造材などが変形すること)をリアルタイムで補正する機能など、工作機械の高度化や知能化を実現する独自技術を数多く保有する。
ロボット関連では2つの技術
タクティカは「トヨダ・アドバンスド・キー・テクノロジー」の頭文字と、戦略を意味するタクティクスを組み合わせた造語。①基盤技術の「タクティカ・テック」②人工知能(AI)などを使って工作機械の知能化を実現する「タクティカ・スマート」③次世代を見据えた加工技術「タクティカ・ビヨンド」――の3つのブランドに分かれる。
テックの中には、ロボットを使った自動化関連の技術もある。ロボットで加工物を工作機械から着脱する「COOPROID(コープロイド)」と、壁掛け式の走行ロボットを活用する「TRANSPIDER(トランスパイダー)」の2つだ。
タクティカ・テックは同社の全ての工作機械に搭載でき、スマートやビヨンドは一部機種のオプションとなる。工作機械とロボットを組み合わせて使う場合は、ニーズに応じてコープロイドかトランスパイダーのいずれかを注文すればいい。
同社はこれまで、工作機械を高度化する技術をそれぞれ単独で提案していた。だが、自社技術を体系的に整理して顧客に分かりやすくPRするため、タクティカという共通ブランドを立ち上げた。
加藤常務は「一つのブランドにまとめ、わが社の技術の幅広さをアピールする。さらに、これらの技術を組み合わせた、新たな提案にもつなげたい」と意気込む。
3日間で約2400人が来場
JTF2019には約30台の工作機械を展示した。3日間で約2400人の来場者を動員した。
タクティカの初披露の場なので、展示機のそばにはパネルを設けて、そこに搭載したタクティカの技術も紹介した。
来場者の注目を集めたのは、コープロイドやトランスパイダーを搭載した自動化システムの展示だった。
例えば、「スカイビング加工」と呼ばれる小型歯車を効率的に加工する工法を取り入れた「ギヤスカイビングセンタ GS200H」と協働ロボット、ビジョンセンサーを組み合わせた自動化システム。コープロイドや、ビジョンセンサーで撮影した画像情報から加工物の形状を識別する「マイスターズアイ」、AIが工具寿命を判断する「エッジチェッカー」など、計4つのタクティカの技術を取り入れ、小型歯車の高効率加工を提案した。
また、カムシャフトと呼ばれる自動車部品を砥石(といし)で加工する研削盤の新製品「GC20S」と「GL32S」で構成するシステムには、トランスパイダーを採用した。2台の研削盤の上部を壁掛け式のロボットが走行し、加工物の着脱や次工程への搬送を担う。非常にコンパクトな自動化システムで、来場者の関心を集めた。
この他、熟練作業者の加工ノウハウをモデル化して最適な加工条件を自動で導出する「タクミニューロン」など、計8つのタクティカの技術を搭載した。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
※この記事の関連記事は「月刊生産財マーケティング」2019年12月号でもお読みいただけます。