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2025.01.30

連載

[連載コラム:いまさら聞けないキーワード]vol.11 食品仕様【後編】

最近よく聞く言葉だけど、「それどんな意味?」と聞かれたら自信を持っては答えにくい――。そんな言葉はありませんか? 新連載コラム「いまさら聞けないキーワード」では、そんなロボット業界のキーワード・新ワードを紹介します。今回は、前回に続き「食品仕様」です。食品製造向けのロボットシステムに求められる仕様について、詳しく見ていきましょう。

 前回は食品製造の現場でロボットシステムが求められる背景や、食品製造向けに特別な仕様が必要とされる理由について述べました。今回は、「食品仕様」として求められる機能について解説します。

 例えば「洗浄できること」は非常に大切です。食品を扱う以上、清潔を維持しなければならないことは言うまでもありません。熱水や薬品で殺菌・消毒洗浄することもあるため、ロボットの各部に防水や防じんに加え、耐熱、耐食性も求められます。食品くずや薬品がたまらないように表面が滑らかで、段差や溝、すき間がないことも重要です。

食品仕様のラインアップ拡充に力を入れるロボットメーカーも

 次に、「潤滑油の安全性」。減速機などロボットの駆動部品の多くに潤滑油が使われていますが、洗浄時の衝撃やシールの劣化などで潤滑油が飛散する可能性があります。万が一、潤滑油が食品に混入し消費者が口にした場合、健康被害の恐れがあります。潤滑油の安全性に関する規格として、米国の国立公衆衛生財団(NSF)の認証が世界標準で用いられます。
 NSFの規格にはH1、H2、H3、3Hの4つがあり、うちH1が唯一、食品に接触する場所で使用でき、食品に混入しても許容濃度の上限はあるものの健康リスクが低いとされます。従って、少なくとも食品に近い場所で稼働するロボットや周辺装置にはH1規格の潤滑油を使う必要があります。

 その他、「表面処理」も特別な対応が求められます。ロボット本体には塗装がはく落しないよう特殊なめっきを施すなどの対策が取られます。ハンドには、食品や汚れの付着を防ぐコーティングが効果的です。

 このように、食品仕様のロボットシステムには他の用途とは異なる配慮が必要で、ルールや規制も厳密です。導入にあたっては、ロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)、ユーザーがしっかりと連携することが肝でしょう。

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