リニアコンベアを提案の核に/ヤマハ発動機 江頭綾子ロボティクス事業部長 インタビュー
機能で差別化、7軸協働ロボット
――今年の国際ロボット展(iREX)では、開発中の協働ロボットも参考出品されました。
協働ロボットは23年中にリリース予定です。今は社内でいろいろと使いながら、このロボットに適したアプリケーション(使い方)を研究している段階です。繊細な力加減の制御ができますので、例えば研磨などには最適だと思います。協働ロボットとしては後発ですが、その分差別化ができる高機能なロボットです。
――垂直多関節構造のロボットでは6軸制御の製品が多いですが、御社の協働ロボットは7軸ですね。
「なぜ7軸なのですか?」とよく聞かれます。7軸でなければできない作業はあまりないですが、7軸あれば便利な場面はしばしばあります。協働ロボットは安全柵なしで使えることがメリットですから、狭い場所で使うことも多いと思います。周囲との干渉(接触)を避けながら狭い空間でどこまで自由に動けるか、ここで6軸と7軸の違いが出ます。例えば、工作機械のワークローディングに使う場合、もちろん6軸ロボットでもできますが、アプローチできる角度の関係でロボットの配置などが限定されます。一方、7軸ロボットであればこうした制約を大幅に減らせます。
マイスター・ハイスクール事業に参画
――ロボティクス事業の今後の課題はありますか?
技術系、ロボティクス系の人材を増やすことが課題の一つです。ロボティクス事業の開発業務は横浜の「アドバンストテクノロジーセンター」やインドでも行っており、ソフトウエアや人工知能(AI)系の人材も積極的に採用しています。また、今年から文部科学省の「マイスター・ハイスクール事業(次世代地域産業人材育成刷新事業)」に参画しました。静岡県教育委員会、浜松市、静岡県立浜松城北工業高校と共に産官学連携でロボティクス人材の育成に取り組みます。
――マイスター・ハイスクール事業ではどんな人材を育成するのですか?
技術者を特別教諭として3年間出向させ、簡単に言えば、ロボットの開発に携わる人材や、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のようにロボットを使いこなせる技術を持つ人材の育成を目指します。育成した人材が将来ヤマハ発動機に入社するかは分かりませんが、ものづくりの楽しさや奥深さを知ってもらい、地元産業界の活性化につながればと思います。
――インタビュー終わり
(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
江頭綾子(えがしら・あやこ)
1991年京都女子大学文学部卒、ヤマハ発動機入社。2018年ソリューション事業本部ロボティクス事業部CS部長、19年ソリューション事業本部ロボティクス事業部長(現任)、22年執行役員。静岡県出身、1969年生まれの53歳。
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