グリッパーのブランド確立を目指す【前編】/北川鉄工所
2017年にグッドデザイン賞受賞
北川鉄工所は2017年11月にグッドデザイン賞を受賞した。対象製品は「プロマノ」ブランドのグリッパー「NTS」シリーズ。17年にデザインを刷新し、同社のコーポレートカラーである青と、機能性を重視した洗練された形状を採用した。特に、メタリックでありながら深みも感じさせる青にはこだわった。設計に携わった技術部技術1課の大塚誠課長は「機能と満足のいく発色や質感を両立させることが難しく、何度も試作を繰り返した」と話す。
NTSシリーズだけでなく、プロマノブランドの多くの製品は順次同様のリニューアルをしている。どの製品も従来製品よりも薄く、軽くなった。NTSシリーズでは最大10%薄くなり、最大30%軽量化した。グリッパーとしては薄く軽いことは、大きな武器になる。狭いスペースでも品物をつかんで取り回ししやすく、グリッパーが軽くなった分だけロボットの可搬質量に余裕ができるため、重い品物をハンドリングできるからだ。
同社はチャック(旋盤で加工する棒材の一端を把持する機器)のトップメーカーの一つだが、プロマノブランドの知名度はまだ高いとは言えない。従来、展示会ではプロマノのブランド浸透のため、あえて北川鉄工所の名前を出さずに出展していたが、思うように宣伝できなかった。そこで「今年1月に出展した第3回ロボデックスでは、北川鉄工所のロゴを添えたところ、明らかに集客力が上がった」と藤本一キタガワ・グローバル・ハンド・カンパニー社長は話す。一朝一夕ではブランドを確立できないということだ。藤本社長は「現時点では売り上げは微々たるもの。これから本格的に拡販に努める」と語る。
新部署「自動化システムチーム」を立ち上げ
ブランド確立を推進するため、今年4月には営業部の下部組織として自動化システムチームを発足させた。自動化システムチームには、製造や技術、営業など部署を横断して6人が参加する。
自動化システムチームが担う責任は大きい。市場調査から販売活動まで幅広く行い、少数精鋭で事業戦略の決定を主導する。その中には、ロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer)とのアライアンス(協力体制)構築、商品企画、効果的な販売方法の立案も含まれる。
藤本社長は「チャックや工作機械用の円テーブルは単体での販売が多いが、グリッパーはロボットに組み込まれてシステムとして機能しなければならない。今後は、ロボットメーカーやSIerとの協業がより重要性を増すだろう」と指摘する。
チャックメーカーが作るグリッパー
そして同社は、チャックで培ったノウハウを、新たな付加価値を備えた製品の開発にも生かす。開発の方向性は「搬送+α」だ。
昨今の人手不足解消と生産性向上のニーズに応えるには、ロボットとてただ運んでいればいい訳ではない。「運ぶ間にも他の工程を組み込めたら、いろいろな可能性が広がる」と藤本社長は話す。その「搬送+α」を実現した新製品を今年度中には発売する予定で、技術部で最終調整を進めているという。
それは一体どのような製品なのか。後編では開発中の2つの製品について話を聞いた。
――続く
(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)
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