[インタビュー]システムはSIerが作る/高丸工業 高丸正社長
中小企業案件には現場力
産業用ロボットの新規ユーザーはこれまで、自動車メーカーをはじめとする大企業が中心でした。それが最近では中小企業へと移っています。わが社が今、10月2日の時点で組み立てを進めているロボットシステムは、7件中4件が中小企業からの受注です。ロボットの台数では19台中12台が中小企業向け。これは受注全体の比率に近いです。
大手メーカーのロボットシステムへの要求には似た部分が少なくありませんでしたが、中小企業はそうはいきません。今進行中の案件も、漁業関連企業や配管メーカー、金網メーカーなど多種多様です。
漁業関連企業の案件はホタテの貝がらにレーザーで穴を開けるシステムですが、同じ形の貝がらは1枚としてないので、難易度の高い案件です。年間2億枚の貝がらに穴を開けるために、4ラインを組み立てています。
この案件、実は最近まで穴開けの精度が低く、歩留まりが50%程度でした。1週間ぐらい毎日ミーティングを重ねていましたが、70代の社員が出したアイデアを試したところ歩留まりは93%まで上がりました。その社員はベテランですが中学校卒です。学歴や知識ではなく、現場をよく知っていること――「現場力」が重要だと改めて実感しました。
大切なのは広い知見
SIerは顧客の現場について深く知ることが重要です。そのためには広くいろいろなことを知っていて、いろいろなことができなければなりません。貝がらにレーザーで穴開けをするのも一つですし、ハンドリングロボットでねじを締めたり、溶接の一種であるTIG溶接をしたり、ハンドリングロボットと溶接ロボットでジグ(補助器具)レス溶接をしたり、ロボットに切断トーチを持たせて曲面に穴を開けたり、ありとあらゆるロボットの使い方を実現してきました。
こうした多様なロボットシステムを開発できるのは、現場力を磨いてきたからこそと自負しています。わが社の社員には、けがきから穴開け、タップ加工、溶接など一通り現場作業を経験させています。
極端な例えですが、溶接を知らない人が設計した溶接ロボットのシステムは使えないのではないでしょうか。逆に、溶接をよく知っていれば溶接ロボットを扱えるわけでもありません。両方を知り、かつ領域外の知見もあってこそ、難しい自動化でもアイデアが出てくるのだと思います。