【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.1]新常態はロボットと共に
披露の場がない!?
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、4月7日に埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言が発令され、16日には対象区域が全都道府県に拡大された。当初の5月6日までの予定が延長され、感染者が少なかった府県では5月14日、感染者が多かった近畿3府県では21日、北海道と関東4都県では25日まで続いた。緊急事態宣言が解除されても、以前の状態に完全に戻ったわけではない。
大勢の人が集まるイベントはまだ開けず、展示会や、各社主催のプライベートショーも次々に中止や延期が決まる。国内だけでなく、海外で開かれる国際見本市も中止や延期が相次ぐ。
自動化関連では、6月にドイツのミュンヘンで開催予定だった自動化やロボットの国際見本市「automatica(オートマティカ)2020」が今年の12月8日~11日に延期された。国内では、7月に愛知県で開催予定だった「ROBOT TECHNOLOGY JAPAN(ロボットテクノロジージャパン)2020」が中止となり、次回展は2022年7月上旬となることも発表された。
足元停滞もその先は
新型コロナウイルスの影響で、景況感は急速に悪化した。日本銀行が4月1日に発表した「全国企業短期経済観測調査(短観)」の数値を見ると、製造業の業況判断は「最近」がマイナス12、「先行き」がマイナス22。製造業の中小企業に限ると、「最近」がマイナス15、「先行き」がマイナス29。景況が「良い」と回答したよりも「悪い」と回答した企業の数が圧倒的に多く、中小企業ほど景況が悪いことが分かる。
6月11日に内閣府と財務省が発表した「法人企業景気予測調査(4~6月期)」の景況判断指数(BSI)を見ても、大企業の製造業でマイナス52.3ポイント、中小企業の製造業でマイナス66.5ポイント。景況感が「下降」と答えた企業が多数を占めた。リーマン・ショックの影響が本格化した2009年1~3月期に次ぐ低い水準だ。
自動化機器は景況の影響を受けやすく、プロジェクトの凍結や新規案件の減少といった影響が出ている。産業用ロボットメーカーの決算を見ても、昨年度の売上高や利益は軒並み減少。今期の見通しも発表できない企業が少なくない。
しかし、各社に話を聞くと「産業用ロボットや自動化が改めて注目を浴びた。今は受注が落ちているが、コロナ禍が一段落したら間違いなく市場は大きく伸びる」と口をそろえる。日本総合研究所(東京都品川区、谷崎勝教社長)が5月1日に発表した岩崎薫里上席主任研究員のリポート「新型コロナ禍が促す企業のデジタルトランスフォーメーション」など、業界各社以外からも自動化ニーズの高まりが指摘される。生産を維持したまま人の密度を下げるには、ロボットなどの自動化機器を導入するしかない。
いったん収束しても、新型コロナウイルス感染症を早期に完全終息させることは難しいと言われ、当面はコロナのリスクに対処しながら経済活動も続ける必要がある。生活様式や経済活動が全く以前と同じに戻ることはなく、コロナ対策を取り込んだ新しい形の「新常態」に移行すると言われる。新常態にロボットは欠かせない。
いまこそ開発を
今回取材した各社は、新常態に向け着々と準備を進める。安川電機の小川昌寛取締役常務執行役員は「経済が回り出すと(省力化などの案件が)一気に動く可能性が高い」と見る。MUJIN(東京都江東区)の滝野一征最高経営責任者(CEO)は「自動化は事業継続計画(BCP)としての価値もある。自動化できるところはするのが当たり前の社会になる」と予見する。東海大学の元教授で自動化コンサルタントの村山省己TSF自動化研究所代表は「サプライチェーンの見直しが進み、国内回帰の流れも出てくる。国内で作るなら自動化は必須」と語る。
社会が大きく変わる時期には産業界も激動に見舞われ、業界内の勢力図が大きく塗り替わる可能性もある。ロボット産業はただでさえここ数年高い注目を集め、製品開発は活発で、新規参入も多い。その激動期を生き抜くには武器を磨くこと、すなわち製品のブラッシュアップが必須だ。繁忙期には新製品の開発まで手が回らないこともあるが、本特集で取り上げた企業など受注が低迷したこのタイミングで新製品の開発に力を注ぐ企業は多い。
自動化の需要が中長期的に伸びることは間違いなく、次の受注のピークはこれまでよりも高い。その日に向けた戦いは既に始まっている。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)