柔軟なゲル素材で、さまざまな物を優しくつかむ/タナック
配合技術や加工技術に強み
タナックは、「黄金の織田信長像」で知られるJR岐阜駅からほど近い場所に本社を構える。
シリコーンゴムや熱可塑性エラストマー、ウレタンなどの「超柔軟ゲル素材」の開発や、これらを使った加工品の製造を手掛ける。2016年には岐阜県各務原市に医療関連の専用工場「タナックテクノロジーセンター」を開設し、現在は2拠点体制で事業を展開する。
超柔軟ゲル素材の配合技術や加工技術に強みを持ち、熱可塑性エラストマーの「クリスタルゲル」、シリコーンゴムの「タフシロン」、ウレタンの「メディピュール」といった自社ブランドの素材を開発した。医療機器や美容、ヘルスケア、航空宇宙、ロボットなどの幅広い業界に向け、これらの加工品を提供している。
元の長さの10倍伸びる
産業用ロボットの分野では、自社製のゲル素材を使ったロボットグリッパーの開発や提案に力を入れている。現状は顧客の要望に合わせ、オーダーメードでグリッパーを設計、製作する。
クリスタルゲルをはじめとした超柔軟ゲル素材をグリップ部分に採用しており、傷を嫌う部品や不定形物、軟体物を優しく搬送できるのが特徴だ。営業開発部第一営業開発課の一色俊和課長は「クリスタルゲルは小さい力で元の長さの1000%、つまり10倍伸びる。伸縮性が高いのに加え、素材を伸び縮みさせた時のひずみも少ない。搬送対象物の形状に倣ってクリスタルゲルが伸縮するため、一つのグリッパーでさまざまな形状の物を安定してつかめる」と説明する。
形状が異なる複数の物をロボットに搬送させる場合、通常は個別にロボットハンドを用意する必要がある。
これに対し、同社が提案するグリッパーはゲル素材が伸縮することでさまざまな物をつかめるため、ハンドをそろえる手間やハンド交換の時間を短縮できる。また、小さい力で素材が伸びるため、グリッパー開閉用のモーターへの負荷を軽減できるのも売りだ。