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2023.04.03

インタビュー

【スペシャルインタビュー】経済安保法は「攻め」 強い産業さらに伸ばす/経済産業省 産業機械課 安田 篤 課長 

昨年12月、工作機械や産業用ロボットを含む11の特定重要物資が定められた。昨年5月に成立した「経済安全保障推進法」(経済安保法)に基づく政策だ。その背景や意義、今後の展開について、2021年7月に着任した経済産業省の安田篤産業機械課長に話を聞いた。「経済安保法は強い産業をさらに伸ばす『攻め』の政策」と力を込める。

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――工作機械や産業用ロボットを「特定重要物資」としました。
 今年1月中旬に取り組み方針をまとめ、経産省のホームページで公開しました。昨年5月に成立した「経済安全保障推進法」(経済安保法)の基本方針を踏まえ、11の特定重要物資(抗菌性物質製剤、肥料、永久磁石、工作機械・産業用ロボット、航空機部品、半導体、蓄電池、クラウドプログラム、天然ガス、重要鉱物や船舶部品)を定めました。その際の要件は①国民生活に不可欠②高い外部依存度またはその恐れ③外乱による供給途絶の可能性④今まさに支援が必要であるか、の4つ。工作機械や産業用ロボットはこの要件を満たす、まさに戦略的な物資と言えます。

――では何をどうサポートするのか。
 工作機械や産業用ロボットの性能を左右する要素は、多岐にわたります。そこでまず「制御」に焦点を絞り進めています。制御にはCNCやサーボ機構、PLC、減速機などが含まれます。これらは、工作機械や産業用ロボットの精密な動作の実現に不可欠であり、競争力の源泉とも言えます。

――具体的には。
 経済安保法に基づく特定重要物資へのサポートは、国内の設備投資と技術開発への補助金という仕組みで進めます。今年度の早いタイミングで具体的なプロジェクトを開始する予定です。工作機械や産業用ロボット用の制御関連機器メーカーなどを中心に、申請案件ごとに審査することになります。工作機械と産業用ロボットについての予算は、2022年度の第2次補正予算で416億円を用意しています。その他の分野も含めると、合計は約1兆円で、その8割近くが経産省の管轄です。申請案件の計画次第ですが、23年度から3年程度以上のスパンで支援できればと思います。補正予算ということは恒常的な予算ではなく、今後も継続するかは情勢次第になります。

――経済安保法や特定重要物資の意義は。
 日本には「外為法」がありますが、これは言わば『守り』です。今回の経済安保法は『攻め』と位置付けることができるでしょう。経済安保法は、安全保障の観点で経済をとらえるものです。現在、世界をリードする産業が、今後もリードし続けるための施策となっています。日米欧と中国という図式で見た場合、中国は「中国製造2025」という国家方針を掲げ、官民一体で急速なキャッチアップを進めています。こうした動きも注視が必要です。日本の工作機械や産業用ロボットは国際的に見てもトップクラスの競争力を有し、外貨が稼げる産業です。こういった産業を強いうちにさらに伸ばす構えです。

――サーボモーターや減速機などは一見すると必ずしも「制御」と関わるわけではありません。
 申請の際にはどのように使うかなどを明記してもらい、対象機器が工作機械や産業用ロボットの安定供給の確保にどの程度寄与するかなどを審査することになります。また、まず制御機器を対象としましたが、対象についてはさらに議論も進めています。

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