[ショールーム探訪vol.16]成長する「ロボの目」の礎を築く/東京エレクトロンデバイス「ロボットセンター」
子会社の強みを生かす
東京エレクトロンデバイスは、半導体や電子機器の販売と、それらを組み合わせたソリューション提案で知られている技術商社だ。
さらに「inrevium(インレビアム)」の名称でプライベートブランドの自社製品の開発にも取り組んでいる。18年に画像処理技術に強みを持つファースト(神奈川県大和市、阪本奇男社長)を買収し、20年に同技術を活用したトリマスの提供を始めた。
独自アプリケーションと専用コントローラーを使い、光学機器から、画像処理ソフトウエア、人工知能(AI)、産業用ロボット、エンドエフェクターまでを統合制御する。それらを一体にして、実際に使うエンドユーザー向けにパッケージシステムのように販売してきた。
これまでに、袋状の対象物を扱うデパレタイズロボットや鋳物部品のピッキングロボット、鉱石をサイズ別に仕分けするロボット、廃棄する白物家電の仕分けロボットなどの実績を積んでいる。
TRCのテスト機でも、石や木材といった不定形物のピッキングと仕分け作業をする。
4つの課題
神本本部長は「ビジョンシステムを使ったロボットの普及には、主に4つの課題がある」と言う。
1つがカメラやレーザー測定機器などのビジョン機器の選択の難しさだ。多くのメーカーが複数の製品を手掛けており、知見や経験なしで選定するのは難しい。
ビジョンシステムとロボットシステムを組み合わせて最適な動作システムを構築する必要がある。これが2つ目の課題で、ビジョン分野とロボット分野の双方に必要な機器、技術はもちろん、それらを統合制御するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)などの知識も必要だ。
さらに、高度な知識を持つエンジニアの人手が足りていない。社会的に自動化ニーズが高まる中、ロボットシステムを構築するシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)も人手不足に陥っている。また、ロボットのシステム構築の技術はあるが、ビジョンまで知見のあるSIerは限られる。
最後は、生産現場での対応の難しさだ。ユーザーの現場では、日々多様な対象物を扱うケースが多く、新しい対象物が追加されるなどの変化も多い。
「さまざまな導入を進めて痛感したのが、ビジョンシステムを使った自動化装置は、多品種少量生産の現場で今求められている。これまで、自動化が難しく人手作業が残ってきた。対象物が変わったり、作業工程の最適化で動作の順番を変えたい、新たな作業を追加したいなど現場での要望が多い。結局はSIer頼みの現状」(神本本部長)。
それらを解消するために、SIer向けの販売を本格化させる方針だ。
今後は従来からあるパッケージシステムと共に、「成長型ビジョンオートメーションシステム」と銘打って、トリマスを展開する。