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2023.07.10

「デジタルSIer」を全国に/アイキューブデジタル

安川電機とYEデジタルが出資するアイキューブデジタル(北九州市小倉北区、竹原正治社長)は、製造業向けIT技術に特化した「デジタルSIer(システムインテグレーター、エスアイアー)」として、生産計画や設備稼働を管理するシステムを開発、提供する。今年5月には日之出水道機器(福岡市博多区、浅井武社長)の佐賀工場で、鋳造の段取り作業を省力化。「デジタルSIerの考え方を全国に広めたい」と竹原社長は話す。

製造業向けのIT屋

「MESを導入することで、リアルタイムで工程の進ちょくを可視化できる」と話す竹原社長

 アイキューブデジタルは、大手ロボットメーカーの安川電機と、ITソリューションを開発するYEデジタルが共同出資し、製造業向けに特化したSIerとして2020年に設立された。統合基幹業務システム(ERP)や製造実行システム(MES)を顧客の製造現場に合わせて開発、提供する。

 「日本では、企業内のITシステムの開発をアウトソーシングすることが多い」と話す竹原社長。「そもそもSIerという言葉は、製造業以外ではITシステムの開発企業を指し、製造業ではロボットシステムなど設備の開発企業を指すことが多い。わが社は製造業向けのIT屋として『デジタルSIer』を提唱している」と話す。

 製造業向けのシステムと一般的なシステムとでは、基準となる時間が異なる。製造業は1秒やミリ秒の世界。製造業向けの方が100倍や1000倍短くシビアなため、製造業には製造業向けのデジタルSIerが求められる。

鋳物工場の段取り作業を劇的に省力化

MESに接続された日之出水道機器の佐賀工場の段取りステーションと造型機

 今年5月には、日之出水道機器が佐賀工場にMESを導入し、段取りの省力化を実現した。上位システムで計画や準備を自動化し、ロボットや無人搬送車(AGV)などの設備と連携させた。これによりデータが蓄積されるようになり、材料や設備の稼働データなどを製品ごとにトレース(追跡)することができるようになった。従来の作業者はシステムの判断をサポートしたり、さらなる改善の検討に回ることができる。今後、生産能力倍増や品質向上、暗黙知の形式知化を目指すという。

アイキューブデジタル本社に設置されたデモ機。せんべいの欠けや焼き色のNGを人工知能で判断し、ロボットで取り除く

 アイキューブデジタルは今後も個別の案件に対しオーダーメードのシステム開発をする一方、ある程度共通項がありボリュームを見込める作業向けにパッケージ製品の開発にも力を入れる。
 今年4月には画像検査システム「Y's-Eye(ワイズアイ)コンパクト」を発売。食品の焼き目などを画像で検査し、NG品はエアジェットで排除する。
 「設置面積は1㎡未満で、後付けでも容易に人の作業を置き換えできる」とメリットを強調する。その他、無償でIT活用度などを分析する「工場診断サービス」も好評で、引き合いの入口として活用する考えだ。

(松川裕希)

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