[SIerを訪ねてvol.39] 見据える先にはチャレンジしかない/BRICS
地域密着のシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)として静岡県東部で業績を伸ばし続けるのがBRICS(ブリックス、静岡県清水町)だ。人材派遣業に始まり機械商社、受託加工業と業容を拡大し、2021年に協力会社だったSIer企業を吸収合併することでSIer事業にも参入した。生産ラインの自動化システム一式の受注などもこなし、SIer事業の足元は多忙を極める。近年特に注力するのが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のロボットハンドの内製。ハンドの軽量化で、必要以上に大きいロボットを使うことなくサイズを最適化しやすい。SIer事業も会社の一つの機能とし、事業間のシナジー(相乗効果)の最大化を図り、さらなる成長を目指す。
地域密着型のSIer
SIerとして必要な物は基本的に全て内製する。制御システムも作り上げるため、制御盤やプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)も内製だ。「基本的には設計者自身が組み立て、ティーチングまで担当する。それが人材教育にもなっている」(清水社長)。
熟練技能者を中心に若い人材の教育に力を入れている。やることの幅が広いこともあり、良く言えば「自由度が高く、個人の裁量が大きい」。それに順応できた人間が残り、力をつけ、エンジニアとして育っている。
SIer業界の「あるある」とも言える通説通り、製造業の中でも人材育成が特に容易でない業界であり、BRICSもその難題に苦労しつつ真っ向から取り組んでいる。
CFRP製ハンドを内製
SIerとして近年特に力を入れる取り組みは、3Dプリンターを使ってCFRP製ロボットハンドを内製すること。ハンドが重いとその分ロボットに必要な可搬質量が大きくなり、余裕を持たせた可搬質量にするとロボットのサイズが大型化しがちだ。軽量化でハンドの重量を下げられれば、ロボットのサイズを最適化しやすい。
CFRP製ハンドは珍しいが「シミュレーションソフトウエアや知恵、経験、ノウハウがあれば、要件を満たすために必要な数値もはじき出せる。試行錯誤を繰り返しつつ、最適解を導き出している」(清水社長)。
これまで手掛けてきた事例としては、「スカラロボットで加工材料(ワーク)の搬入→小型マシニングセンタ3台で機械加工→リニアの走行軸に載せたロボット2台でワーク搬送→バリ取りユニットでバリ取り→リーク(漏れ)テスト」。これは自動車の水素系の部品加工ラインの大型案件だ。
他にも、ダイカストマシンにスプレーロボットや取り出しロボットを付帯したシステム、世界最大級の大型ロボットを使ったレーザー焼き入れシステムなど、さまざまなロボットシステムを構築してきた。
「最近は設備機械にロボットはじめ自動化機器を付帯してプラスアルファの付加価値を追求する案件がほとんど」と清水社長は話す。