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2024.09.26

連載

[ショールーム探訪vol.29]三品産業に自動化を/ブイ・アール・テクノセンター「岐阜県ロボットSIセンター」

ロボットダイジェストの記者が、読者に代わりショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。第29回は、岐阜県や製造業関連の民間企業などが共同出資で設立した「第三セクター」のブイ・アール・テクノセンター(岐阜県各務原市、松原正隆社長)が運営する「岐阜県ロボットSIセンター」を訪問した。地域産業の高度化を使命に掲げる同社は、食品、医薬品、化粧品の三品産業をはじめとしたロボットの未活用領域をターゲットに、産業用ロボットを使った自動化システムを提案する。

第三セクターが運営するショールーム

テクノプラザ本館の5階エントランス

 VRテクノセンターは、岐阜県や製造業関連の民間企業など38社・団体が共同出資して1993年に設立した第三セクターだ。同社は県が整備した産業団地「テクノプラザ」の本館に拠点を構える。テクノプラザは全体が丘陵地となっており、さまざまな製造業の工場が立ち並ぶ。その中核を成す本館の4階に今回訪問した岐阜県ロボットSIセンターがある。

 東海北陸自動車道の岐阜各務原インターチェンジを降り、自動車で20分ほど北東に向かうとテクノプラザの入り口に到着する。そのまま北エリアを目指して案内板に従って進むと本館が見えてくる。本館東側の駐車場を利用すれば、エントランスがある5階はすぐ近くだ。

「説明ボード」に工夫

各ロボットシステムの横には作業内容を説明したボードを配置

 岐阜県ロボットSIセンターは、産業用ロボットを使った自動化システムのショールームとして17年に設けられた。もともとは本館から徒歩約5分の「第一別館」にあったが、22年9月に本館の4階に拡張移転した。SI部の高橋寛明次長は「本館1階に本社の事務所があるため、事務所を訪れた人に気軽にセンターを案内しやすくなった」と話す。

 センターに入ると、窓から自然光がふんだんに差し込むからか、明るい印象を受けた。完全予約制でセンター内には打ち合わせスペースもあるため、展示されたシステムを前に同社の担当者とじっくり話せるのもポイントだ。
 現在は5社のロボットメーカーの協働ロボットを使った5種類の自動化システムを展示している。入り口から見て左手から順番に、「ボトルのふた閉め工程」「ボトルのラベル検査工程」「アルミ袋のラベル検査工程」「箱の組み立て工程」「箱詰め工程」を担うロボットシステムが並ぶ。製品の組み立てからラベル検査、箱詰めまでの工程別に自動化システムを展示することで、工程ごとにロボットでどう自動化すればいいかをイメージしやすいように工夫した。

  • ボードの上部にはシステム構築を担ったSIerも紹介

  • 高橋次長(=写真右)からそれぞれのロボットシステムについて説明を受ける記者

 同社が来場者のメインターゲットに据えるのは、三品産業をはじめとしたロボットの未活用領域の企業だ。高橋次長は「製造業の中でも自動化が特に進んでいない三品産業に焦点を当て、ロボットシステムを構築した」と話す。
 ロボットに不慣れな来場者のために、各ロボットシステムの横に設置した説明ボードにも工夫を凝らした。システムの構築を担ったシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)をボードの目立つ箇所に記載したのもその一つだ。
 高橋次長は「ロボットは『買って終わり』ではない。それぞれの製造現場が抱える課題を言語化した上で、SIerと一緒にロボットシステムを作り上げていくものだと来場者に説明している」と語る。

 また、自社開発した生産稼働状況管理システム「MARS(マーズ)」も展示する。複数のメーカーのロボットでも、一つのユーザーインターフェース(UI、機器やソフトウエアの操作画面)で稼働状況を管理できるのが特徴だ。センター内に設置されたモニターでそれぞれのロボットシステムの稼働状況を確認できる。

今年4月に開設したばかりの「スマート工場実証ラボ」

 高橋次長にセンターを一通り案内してもらった後、今年4月に開設したばかりの「スマート工場実証ラボ」もご厚意で見学させてもらうことに。
 スマート工場実証ラボは岐阜県ロボットSIセンターと目と鼻の先にある。岐阜県で唯一のローカル第5世代移動通信システム(5G)の基地局を備え、大容量のデータでも高速で通信できる環境を整備した。約400㎡の広々とした空間で、自律走行型搬送ロボット(AMR)を使った自動搬送や遠隔での製品検査などのデモが見学できる。

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