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2024.10.09

「植物工場なら日本は勝てる!」、日本にオープンイノベーション拠点開設【後編】/Oishii Farm 古賀大貴CEOインタビュー

Oishii Farm Corporation(オイシイファームコーポレーション)は、植物工場でイチゴを生産する米国のベンチャー企業だ。植物工場は自社開発で、日本のオートメーション技術と施設園芸の技術を組み合わせた。「植物工場は日本の技術が生かせる分野。今後、農作物を植物工場で生産することが一般的になると、自動車に匹敵する産業として巨大な設備投資需要も生まれる」と古賀大貴最高経営責任者(CEO)兼共同創業者は語る。来年には植物工場をさらに進化させるため、日本にオープンイノベーション拠点を開設し、日本企業との連携強化を図る。

日本の首都圏にイノベーション拠点開設

オープンイノベーションセンターでは幅広い分野を研究

――前編で話が出た「オープンイノベーションセンター」について具体的に教えてください。
 場所は現在検討中ですが、首都圏のどこかに来年中には開設したいと考えています。幅広い分野の研究開発をするため施設の規模はある程度必要ですが、共同開発の拠点ですからアクセスも重視しています。工業領域ではロボティクスや空調、建設、モノのインターネット(IoT)システム、発光ダイオード(LED)などのメーカーと連携し、農業関係では種苗や液肥などのメーカーと連携していきます。

植物工場の「ターンキーソリューション化」を進め、グローバルな展開を目指す

――各分野のメーカーと連携して、何を目指しますか?
 現在はまだ植物工場がそれほど一般的ではありませんから、空調設備もロボットもLEDも栽培品種もその他要素技術も植物工場向けの専用品は開発されていません。自社のエンジニアが苦労しながら、汎用品を組み合わせている状況です。この状況を変えたいと考えています。個別開発なしで世界中に展開できるよう、全ての要素を最適化してパッケージ化したい。植物工場で「ターンキーソリューション化(鍵を回すだけですぐに稼働させられること)」を実現したいと考えています

植物工場は巨大産業になる

同社は植物工場で食料問題などさまざまな課題の解決を目指す

――植物工場は今後もっと一般的になりますか?
 日本でも近年、自然災害や異常気象が多く発生しています。そうなると収穫量が安定せず、既存農法の農作物の価格は上がります。一方、植物工場の農作物は、植物工場が普及すればするほど価格が下がります。畑で作る農作物より、植物工場で作る農作物の方が安くなる時代はそう遠くないと考えています。イチゴだけでなく、さまざまな果物や野菜が栽培でき、将来的には穀物も栽培の対象になり得ます。世界的な食料危機や担い手不足など農業の問題は山積みで、植物工場がその解決策になれば、必要となる植物工場の数は膨大です。

――植物工場で生産した農作物の将来的な市場規模は?
 世界全体で200兆円以上の規模になると予想されていますが、さらに伸びると考える人もいます。植物工場が世界中に行き渡るまでは新設需要が膨大にありますから、植物工場を作るための機器や設備の調達額も、年間数十兆円にはなるでしょう。

「植物工場で再び日本が“ものづくり大国”になる」と話す古賀大貴CEO

――巨大産業に成長するとの見通しですね。
 これまで工業をけん引してきたのは自動車産業でしたが、植物工場はそれに匹敵する規模になるポテンシャル(可能性)を秘めています。自動車業界の一次サプライヤー(ティア1)は、自動車業界の発展に伴って売上高数兆円といった巨大企業にまで成長しました。植物工場に使われる要素技術を持つメーカーにも、同様の可能性があると思います。そして、必要な要素技術がそろっている国は日本しかない。植物工場は、日本が「世界に冠たる“ものづくり大国”」に返り咲く原動力になり得ます。

――とても夢のある話です。
 必要な技術がそろっているのは日本だけですが、各要素技術で見れば世界中に競合がいると思います。植物工場の市場規模が拡大してから研究開発を始めるのでは、海外に後れを取ってしまいます。今後世界で勝つためのパートナーとして、日本のオートメーション業界の皆さまとはオープンイノベーションセンターでぜひ協業できればと考えています。

――終わり
(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

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