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2024.10.18

連載

[活躍するロボジョvol.33]ニーズに合った製品を提供したい/ニッセイ 木下春香さん

ロボット業界で活躍する女性にスポットを当てた連載「活躍するロボジョ」。第33回は、ニッセイで減速機「UXiMO(アクシモ)」シリーズの「中実タイプ」の開発に携わった木下春香さんを紹介する。今年4月、入社以来6年間にわたり開発に力を注いできた中実タイプがついに発売された。「製品カタログが出来上がった時に、自分が手掛けた製品が世の中に発表されるんだと実感が湧いた」と話す。今後は中実タイプの性能改善や特注品への対応の他、中実タイプを応用した新製品の開発などにも取り組む。

組み図の作成から顧客対応まで

 ニッセイの木下春香さんは、減速機事業部開発二部RC開発課に所属する。入社以来、減速機のUXiMOシリーズの中実タイプの開発に携わってきた。シリーズの第三弾となる中実タイプは高剛性と高トルクが強みで、豊富な減速比をそろえるのが特徴だ。「シリーズ全体の強みである高剛性はそのままに、もっとコンパクトにできないかと考えて開発しました」と木下さんは話す。

中実タイプは産業用ロボットや自律走行型搬送ロボット(AMR)などに使われる(提供)

 木下さんの業務は減速機の完成図である「組み図」の作成から、発売後の顧客対応まで多岐にわたる。「組み図だけではなく、減速機を構成するさまざまな部品の『部品図』の作成や出来上がった部品の寸法検査、組み立てたサンプルの性能評価も手掛けています。中実タイプの発売が間近に迫っていた時は、カタログなどの販促物の制作にも関わりました」と説明する。

一人では無理だった

開発した中実タイプを手に

 中実タイプが発売されたのは今年4月。入社以来6年間、開発に注力してきた木下さんにとって達成感ややりがいもひとしおだった。「カタログが出来上がった時に、自分が手掛けた製品が世の中に発表されるんだとようやく実感が湧きました」とほほ笑む。

 中実タイプは主に産業用ロボットをターゲットとした減速機のため、高い位置決め精度やトルクに加え、コンパクトさも求められる。「これらの要素を同時に満たすのが難しく、部品の公差(許容される誤差の範囲)を一つ一つ見直して試行錯誤するのが大変でした」と語る。

中実タイプの概要(提供)

 中実タイプの開発には少人数のチームで挑んだ。さまざまな困難があったが、チームメンバーの存在に支えられたという。木下さんは「チームのみんなが頑張っていたから私も頑張れたし、難しい課題も解決しようと思えました。一人では無理でした」と振り返る。

「ものづくり」がしたい

「答え合わせができる瞬間はうれしい」と笑顔で話す

 木下さんは今年で入社7年目を迎えた。大学時代は工学部で学んだが、入社するまでは機械に触れたことすらなかった。「手芸で何かを作るのが昔から好きでした。そこで、『ものづくり』ができる職業に就きたいと思い、メーカーに就職しました」と話す。また、ニッセイを選んだ理由は、「先輩社員や採用担当者の雰囲気の良さに魅力を感じたからです」と当時を振り返る。

 仕事で楽しい場面を聞くと、「部品の精度や寸法と減速機の性能の関係性について仮説を立て、それが実証できた時ですね。なかなか思い通りにはいきませんが、答え合わせができる瞬間はうれしいです」と笑顔を見せる。

もっと製品を知ってほしい

「展示会では自信を持って製品の強みを説明したい」と話す

 現在は中実タイプの性能改善や特注品への対応の他、中実タイプを応用した新製品の開発などに取り組む。「今は駆け出しのこの製品をより多くのお客さまに知ってほしいという気持ちが強いです。お客さまの要望に合わせた特注品も製作していますから、ニーズを聞いてより良い製品を提供したいです」と意気込む。

 職業柄、プライベートでも減速機をつい見つけてしまうという木下さん。「最近だと、回転ずし店のレーンや映画館のポップコーンを作る機械の中に減速機が組み込まれていました」と笑う。

(ロボットダイジェスト編集部 平川一理)

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