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2024.12.04

連載

[ロボットが活躍する現場vol.43] タッグで挑む自動化の道/スザキ工業所

自動車関連の金属プレス部品の加工などを手掛けるスザキ工業所(岐阜県各務原市、鷲崎純一社長)はシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の日晃オートメ(同市、沖原由洋社長)と共に今年1月、プレス部品の箱詰め作業を自動化する協働ロボットシステムを導入した。「多品種少量生産の自動化は難しいが、ロボットの導入に二の足を踏んでいてはいけない」とスザキ工業所の管理部生産管理課の鷲崎圭一郎主査は話す。今後はスポット溶接工程への協働ロボットシステムの導入も計画しており、自動化しやすい工程から段階的にロボットへと置き換えていく構えだ。

箱詰め作業を自動化

スザキ工業所の工場内に並ぶプレス加工機

 スザキ工業所は創業以来、自動車部品の金属プレス加工や溶接加工などを手掛けてきた。1ロットあたり30個程度が主流で、取り扱う品種は約700種類に上る多品種少量生産が特徴だ。
 近年は農機具や道路用部品の製造にも力を注ぐ。鷲崎主査は「新型コロナウイルス禍で自動車関連の需要が落ち込んだ際、農機具部品の売り上げが経営を下支えした。この経験から自動車業界への過度な依存は避け、取引先の業種を多角化するよう常に意識している」と話す。

プレス部品を箱詰めする台湾のテックマンロボット製の協働ロボット

 同社は自動車業界向けの自動化装置や専用機の設計や製作を得意とする日晃オートメとタッグを組み、今年1月にはプレス部品の箱詰め作業を自動化する協働ロボットシステムを導入した。

 これまで作業者が手作業で部品を1箱あたり100個ずつ箱詰めしていた工程を、台湾テックマンロボット製の協働ロボットが2箱同時に100個ずつ箱詰めする。
 協動ロボットとプレス加工機は連動しており、協動ロボットが箱詰めを終えるとプレス加工機が自動で停止する。そのため、作業者は箱詰めのためにプレス加工機の前で張り付く必要がなくなり、箱詰めされた箱の交換とプレス加工再開のスイッチを押すだけで済む。

 鷲崎主査は「協働ロボットシステムを導入した結果、箱の交換回数自体も半減した。作業者は他の付加価値の高い業務に集中できる時間が増えた」と胸を張る。

一番簡単な工程から

左から日晃オートメの沖原由洋社長とスザキ工業所の鷲崎圭一郎主査

 そもそも、スザキ工業所が自動化を検討し始めたのは今から3年ほど前。
 「従業員の高齢化もあって今後の労働力不足を危惧していた。また、自動車部品の製造は単価が低いため、作業の自動化や効率化は喫緊の課題でもあった」と鷲崎主査は話す。

 そんな時、鷲崎主査の父親である鷲﨑社長が、近所に本社を構える日晃オートメの沖原社長に「協働ロボットを使った自動化を検討したい」と相談を持ちかけたのがきっかけで、両社の本格的な自動化プロジェクトが始まったという。

 その後、自動化プロジェクトの旗振り役を担う鷲崎主査と沖原社長との間で昨年9月ごろから、自動化システムの具体的な仕様やリスクアセスメント(リスクの分析や評価、対処)などの打ち合わせが本格化した。そして、自動化プロジェクトの第一弾として今年1月、箱詰め作業の自動化を担う協働ロボットシステムの導入にこぎ着けた。

 鷲崎主査は「リスクを最小限に抑えるため、まずは工場内で一番簡単な作業である箱詰め作業の自動化から着手した。対象のプレス加工機は週に3回ほどしか稼働しないため、協働ロボットに何か問題が起きたとしても、生産をすぐに挽回できる。簡単な工程から段階的に自動化を進めることで、より高度な自動化にこれから挑戦する上での知見を蓄えたかった」と振り返る。
 また、沖原社長は「最初から自動化すべき工程が明確だったため、両社の間で話がスムーズに進み、自動化に着手しやすかった」と話す。

自動化の事例を発信

作業者が部品をスポット溶接する様子

 スザキ工業所は現在、自動化プロジェクトの第二弾として、スポット溶接の自動化システムの導入を計画している。
 具体的には、協働ロボットが部品をスポット溶接機にセットし、ボルトを打ち込んだ場所にスポット溶接をする。単一の部品しか取り扱わない箱詰め作業と異なり、今回は同じボルト径を持つ8種類の異なる部品を取り扱う。部品ごとに穴の位置が違うため、第一弾よりも自動化のハードルは上がる。

 鷲崎主査は「ロボットハンドの交換などの段取り替え(セッティングの変更)が多く、多品種少量生産の自動化は難しい。しかし、ロボットの導入に二の足を踏んでいては、将来的な高度な自動化を実現するための基盤を構築できない。だからこそ、現時点でできるところから少しずつでも自動化を進めることが大切」と述べる。

 また、スザキ工業所は幅広い業種の企業や団体に向けた工場見学も実施しており、鷲崎主査は「多くの企業や団体に自動化システムやわが社の取り組みを発信し、『うちもやってみよう』と自動化への一歩を踏み出す企業を後押ししたい。自動化ニーズが拡大すれば、協働ロボットの本体価格も下がると期待する」と話す。
 沖原社長は「SIerは顧客との守秘義務の関係で自動化の事例を外部に広く発信するのが難しい。そのため、わが社としても、協働ロボットを使った生産ラインの自動化の事例を広くアピールできるのは非常にありがたい」と語る。

(ロボットダイジェスト編集部 山中寛貴)

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