生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2024.12.09

連載

[ショールーム探訪vol.32]搬送の自動化をまとめて提案/ヤマハ発動機「CONNECTED SQUARE」

ロボットダイジェストの記者が、読者に代わりショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。第32回は、浜松市中央区にあるヤマハ発動機の浜松ロボティクス事業所のショールーム「CONNECTED SQUARE(コネクティッドスクエア)」を訪問した。同事業所の大規模な増改築に伴い、今年4月にリニア搬送システム「リニアコンベアモジュール」やスカラロボットなどのファクトリーオートメーション(FA)機器のショールームを従来比で約2.6倍に拡張した。ここでは、ミクロン単位の精度が求められる小型部品の搬送から屋外搬送のキロメートル単位の移動まで、コネクティッドスクエアで見られる幅広い搬送の自動化システムの一端を紹介する。

床面積を約2.6倍に拡張

今年6月に増改築が完了した浜松ロボティクス事業所(提供)

 ヤマハ発動機の浜松ロボティクス事業所にはJR浜松駅から遠州鉄道に乗り換え、「浜北駅」からタクシーに乗って20分ほどで到着する。周辺一帯はさまざまな製造業関連の企業の本社や主力生産拠点が立ち並ぶ産業の集積地で、浜松市内を南北に走る通称「都田テクノロード」沿いに同事業所はある。

ショールームのリニューアルに携わったロボティクス事業部営業統括部FA営業部営業企画グループの親川風香さん

 同事業所では今年6月に、半導体チップをプリント基板に載せる「表面実装機」やFA機器の生産能力の拡大を目的とした増改築が完了したばかり。これに合わせ、FA機器のショールームも従来の約2.6倍の360㎡に床面積を拡張した。事業所全体の増改築の完了に先立ち、同年4月1日にコネクティッドスクエアはリニューアルオープンを迎えた。

 自動化システムの販売では電気自動車(EV)関連の車載製品や、電子部品、電気製品向けが多くを占めるが、医薬品、食品、化粧品の三品産業など幅広い産業で導入実績がある。
 コネクティッドスクエアは三品産業も含めた幅広い産業を来場ターゲットに据えている。ロボティクス事業部営業統括部FA営業部営業企画グループの親川風香さんは「コネクティッドスクエアのターゲットは設備の課題を解決したいお客さま。自動化や省力化システムの導入を検討している方なら、誰でも来てもらえる」と話す。
 現在はホームページから来場予約を受け付けており、一度に最大で約40人まで来場可能だ。

自動化のヒントを持ち帰る

部屋を縦断するように置かれた「リニアコンベアモジュールLCMR200」

 コネクティッドスクエアに入ると部屋を縦断するように置かれたリニア搬送システム「リニアコンベアモジュールLCMR200」が目に付く。それを囲むようにデモシステムがずらりと並ぶ。赤と白を基調としたモダンな空間は美術館さながらだ。
 親川さんは「ロボットのショールームは殺風景になりがち。ロボットに対して良いイメージを抱いてもらえるよう、華やかな印象の温かみのある照明を選んだ」と話す。
 これまでに来場したのはロボットを導入するユーザー企業やシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)、販売代理店など。リニューアルオープンにより、1カ月の平均来場企業数が従来の約3倍に増加したという。

 展示の目玉は、高速搬送に加えて精密な位置決めができるリニアコンベアモジュールを使ったデモシステムだ。対象物(ワーク)を搭載したスライダーの一つ一つの動きを個別に制御できるため、特定のワークだけを別のラインに搬送することも可能だ。
 親川さんは「多品種少量生産に対応する自動搬送システムへのニーズが高まっている。リニアコンベアモジュールはスライダーの停止位置をプログラム上で簡単に変更できるため、こうしたニーズにも応えられる」と説明する。

  • スカラロボットの系譜をたどれるパネル展示。ラインアップの豊富さがうかがえる

  • リニアコンベアモジュールLCMR200と同社の産業用ロボットを組み合わせて柔軟にシステムを構築

 現在コネクティッドスクエアでは、ワークの搬送、組み立て、検査、仕分けのデモシステムをはじめ、参考展示の7軸の協働ロボットなど多岐にわたる自動化システムを展示している。また、グループ企業のeve autonomy(イブオートノミー、静岡県磐田市、星野亮介最高経営責任者)が開発した無人搬送のパッケージソリューション「eve auto(イブオート)」も置いた。ヤマハ発動機の屋内外対応のEVにティアフォーの自動運転技術を搭載しており、屋外環境や無人搬送が可能だ。
 親川さんは「わが社は『μ to km(ミクロン・トゥ・キロメートル)』をコンセプトに、幅広い搬送の自動化をまとめて提案できるのが強み。ショールームの拡張に伴い、豊富なラインアップをまとめてお見せできるようになった」と自信を見せる。

  • 参考展示の7軸の協働ロボットシステムや、屋外環境で無人搬送が可能なイブオートノミーのEVなどが並ぶ

  • リニア搬送システムを使った検査のデモ。要検査のワークだけを「NG品再検査ライン」に搬送できる

ショールームではリニアコンベアモジュールに触ることもできる。記者もスライダーの滑らかな動きを体験させてもらった

 同社がショールームのリニューアル前からこだわっていたのが、「具体的」なデモシステムの展示だ。親川さんは「ショールーム内のデモシステムは、お客さまの具体的な困り事から着想を得て構築している。だからこそ、デモシステムを見て自社の潜在的な課題に気付く来場者も多い。ぜひ、コネクティッドスクエアに来て、『ここも自動化できるんだ』と自動化のヒントを持ち帰ってほしい」と語る。

TOP