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2019.02.15

[特集SIerになろうvol.3]製造業からSIerへ【その1】/戸苅工業

産業用ロボットを周辺機器や他の設備などと組み合わせてシステム構築する、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)への製造業からの参入が相次ぐ。昨年7月にFA・ロボットシステムインテグレータ協会(会長・久保田和雄三明機工社長)が日本ロボット工業会内に設立され、会員数は180社を超えた。成長が確実といわれ、需要は増えると見込まれるSIer。製造業から参入しただけに、顧客の製造業者の現場を知り「悩み」や「苦労」も分かち合える。[特集SIerになろう]のvol.3-5では、新規参入を検討する企業にとってアニキ分とも言える先輩企業3社の取り組みを聞いた。

当初はアクチュエーターの1つとして

「30年かけて築き上げた歴史とノウハウがある」と話す戸苅康成社長

 戸苅工業(愛知県豊川市、戸苅康成社長)は1964年の創業以来、製缶や板金、機械加工での部品製作に加え、産業用ロボットの周辺設備の設計や製造を通じて、さまざまな業種の工場で自動化を進めてきた。特集SIerになろうvol.1で久保田和雄SIer協会会長がインタビューで語った「ロボットが一般化する前から、製造現場の自動化を担った『自動機屋』や『専用機屋』がSIerだった」例の典型と言える。まさしくロボットが一般化する以前から、製造現場の自動化などを担ってきた。
 戸苅工業は87年からスイスのメーカーABBのロボットを使い、製造現場の自動化を進めてきた。当時まだABBの日本法人はなく、ロボットは商社を通じて入手するしかなかった時代だ。SIer協会発足の30年も前、前社長で創業者の戸苅幸一会長の時代から技術者集団としてSIerの実績を重ね続ける。
 SIer参入のきっかけは「顧客に自動化を提案するなかで、電気信号を物理的運動に変換する、サーボモーターなどのアクチュエーターの一つとしてロボットを使い始めた」と、2014年に父の幸一会長の後を継いだ戸苅康成社長は語る。「6軸全ての制御を自分で考える必要がなく扱いやすかった。それまで使っていたエアや油圧シリンダーをロボットに変えた」という。

レーザーロボ実用化進める

 2006年にはロボット設備部門を強化、09年からファイバーレーザーをロボットの加工ツールとした設備を開発。戸苅工業は製缶や板金、溶接や機械加工などが母体。プレス機、レーザー切断機、マシニングセンタ、5面加工機、ワイヤ放電加工機など生産設備がそろう。高精度の部品から大きな構造部品まで、部品製造はお手のものだ。ロボットの導入に必要な周辺部品のほとんどは自社で賄う。
 高品位の制御プログラムを持ち、軌跡精度が高いロボットと、レーザー、ウォータージェットなどとを組み合わせた自動化の提案が最も得意だ。用途は切断、溶接、バリ取りなど。本社内の研究室では、ファイバーレーザーを組み合わせたレーザーロボットで加工トライを行い、設備化に向けた実験も受託している。
 戸苅社長は「超高齢化社会を迎え、日本の労働者人口は3分の2になると言われる今、省人化や自動化はますます求められる。一方で若者の製造業離れは深刻で、近隣の工業高校では卒業生の大半がサービス業などの第3次産業に就職すると言われる時代です」と語る。

  • 本社内の研究室で開発を進めるレーザーロボットの先端部

  • 本社内の研究室で開発を進めるレーザーロボット

 戸苅工業はSIer協会の発足当初からの会員だ。「他の会員企業には、自社にはない技術やノウハウを持つ優秀な企業が多くあり競争相手にもなりうるが、互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、ときには協業し先進的な設備を創造していきたい。SIerの仕事は、リピート受注したもの以外は全て仕様が違う特注品。仕様書の通りの精度やタクトタイムが守れるよう、工夫し構想する毎日。しかし当社には30年かけて築き上げた歴史とノウハウがある。その間には乗り越えるのが困難な高い壁も多くあった。数をこなした分の経験値はある」(戸苅社長)との自負がある。
 輸出管理や貿易業務の難しさから、海外資本の企業との直接取引はないが、日本企業の海外進出などで、SIer事業の20~25%は海外での売り上げだ。ロボットと機械、電気をそれぞれ担当する3人を最小単位に各国へ飛ぶ。年間に10件ほど海外の案件もこなす。北米や南米、東南アジアや東アジアなどで納入が増加傾向だ。
 直近では06年と14年に新工場を建設した。将来の拡張を見据え、隣接地も確保し新工場の建設も計画中。SIerとして、ロボットを組み込んだ自動化の需要はさらに高まるとみる。

――終わり


(ロボットダイジェスト編集部 長谷川仁)



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