KUKAは高品質のメカをニッチな分野にも、IoTにも提案する【後編】/KUKAジャパン星野泰宏社長(1/3)
「協働」の概念が生まれる前から
――人と同じ空間で働ける協働ロボット開発の経緯は。
実は「協働」の概念がなかった1990年代からわれわれはドイツ政府機関のドイツ航空宇宙センターと共同でロボットを研究し、宇宙船の船外活動で使うロボットアームを開発しました。7軸構造で自由度が高く、何かとぶつかっても壊れたり壊したりしないロボットです。当時は「安全ロボット」と呼んでおり、「人と協働する」ことに主眼は置いていませんでした。その技術を今で言う協働ロボットに応用したことで、LBRイーバの7軸可動やトルクセンサー内蔵といった独自性につながっています。
――日本で披露したのはいつですか。
われわれが日本で協働ロボットを披露したのが2009年。LBRイーバの先代の試作品でした。一般的な産業用ロボットに比べると、動作が遅くて可搬質量も小さい。当時は「何に使うんだ」と見学者が戸惑っていました。その後13年に産業用ロボットの使用方法などを規定する労働衛生規則を厚生労働省が改定しました。そこで「協働ロボット」の要件を定義。それ以降は一定の条件を満たせば、安全柵なしで人間とロボットが同じ空間で作業できる「協働ロボット」の認知が広がり、市場ニーズも高まっています。
――協働ロボットを特に提案したい分野は。
ロボットの導入が進んでいない分野に積極的に提案したいと思っています。もちろん既にロボットが使われている分野でも自動化できていない工程はあり、KUKAの高性能なロボットだからこそできる自動化提案を引き続き行っていきますが、新規分野での可能性も大きいと考えています。一例ではありますが実際に韓国では、カフェでコーヒーを作るバリスタの役割をロボットが務める事例があります。
――KUKAのロボットの使用事例は世界中にあります。
そこもわれわれの強みと考えています。世界中の導入事例を共有しています。海外の事例を基に、日本向けにプログラムの微修正をします。日本法人の本社建物内にはテクニカルセンターがあり、そちらでプログラムを研究しています。
――テクニカルセンターには他の役割もありますか。
はい。顧客向けの講習会やトレーニング会を開いています。実際のロボットを動かしながら、制御プログラムを作ってもらう。申し込みがあれば、随時開催しています。最近はシステム構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)だけでなく、ロボットを導入するユーザー企業の受講も増えています。