[SIerを訪ねてvol.15]けん玉だけじゃない! DXで未来を開く【前編】/マクシスエンジニアリング
FA装置、金型、技術者派遣
マクシスエンジニアリングは、産業用ロボットや専用機など駆使した工場自動化(ファクトリーオートメーション、FA)装置を設計、製作するSIerだ。
FA装置事業の他には、自動車のプラスチック部品やゴム部品向けの金型の製造や、技術者派遣の事業も展開する。技術者派遣では主に「CATIA(キャティア)」と呼ばれる、自動車業界で広く採用されるハイエンドなCAD(コンピューター支援設計)ソフトウエアを使える技術者を、自動車業界などの顧客に派遣している。
同社の創業は1996年。金型の製造からスタートし、企業の合併・買収(M&A)を経て業容を拡大してきた。
浅野好文常務執行役員は「FA装置も、金型も、技術者派遣も『技術』という点では根っこは同じ。当初は、金型事業で取引実績のある顧客から『CATIAに関する技術支援をしてもらえないか』『この工程に対し、こういう装置を開発してもらえないか』などとの要望を受けることが多く、これに応えるには時代に即した事業体制を敷くことが必要と考え、M&Aを進めた」と説明する。
本社は名古屋市千種区にある。FA装置事業の主な拠点は同市西区の名古屋工場と、同市昭和区の金山テクノラボの2つだ。この他、グループ企業のエルクラフト(滋賀県東近江市、水野敬三社長)もFA装置を設計、製作する。
今回訪ねたのは金山テクノラボ。2018年11月に設立した、ロボットシステムや画像処理技術の開発を担う研究施設だ。
傾聴力と技術力が売り
FA装置事業では、ロボットシステムや専用機を自動車業界の顧客に納入した実績が多いという。一方、エルクラフトは電子部品業界が得意だ。
浅野常務は「自動車業界は『CASE(ケース=コネクテッド、自動運転、シェア、電動化の頭文字をつなげた造語)』に代表される産業構造の変化に加え、新型コロナウイルス禍の影響で引き合いの数は減少傾向にある。一方で、次世代通信規格(5G)の需要を受け、半導体や電子部品関連の新規案件が急速に増えた」と最近の市況を語る。
SIerとしての強みは、自動化ニーズへの対応力。顧客の要望の勘所をつかんだ最適な工法を提案でき、スマート(知的)なFA装置を企画・構想設計から製作までワンストップでできるのも売りだ。
浅野常務は「顧客が本当に求めていることは何か。それを装置に落とし込む際の勘所を理解するまでヒアリングを重ねる傾聴力と、そこから提案する最適な工法を設備として具現化できる技術力が売り。これまでの経験に裏付けされたノウハウと、原理原則に忠実なアカデミックな知識をミックスして、最適なFA装置を顧客に提案できる」と分析する。
多品種少量生産に力を発揮するロボットを積極的に配置したシステムや、半自動機を提案する場合もあれば、高い生産効率を重視した専用機を提案するケースもある。システム構築に使うロボットも、種類やメーカーを問わず幅広く対応できる。
ロボットシステムでは、人と協働するアプリケーション(応用的な使い方)の導入実績が増え、専用機では高度な組み立て装置や検査装置の導入実績が多いという。