FA向けに注力! 工場やAGVに「目」を付ける/キヤノン
画像処理を多様な分野に
キヤノンはカメラやプリンターなどのメーカーとして知られるが、近年は画像処理技術を活用した事業者向けの提案に力を入れる。
医療や公共施設、学術機関など幅広い分野に画像処理技術の活用を提案するが、FA市場の開拓にも本腰を入れる。ロボットと組み合わせて使う産業用カメラなど、製造現場で使う製品も従来から一部あったが、FAに本格参入したのは2018年だ。
同社は自社工場の設備を生産技術本部で内製するなど、生産技術力を重視してきた。「カメラの精密部品を扱う設備から、プリンターのインクカートリッジのような高速作業が求められる設備まで、幅広く自動化した経験がある。FA分野ならそのノウハウを生かせる」と枝窪副事業本部長は言う。
AGVの誘導技術を外販
FA市場開拓の一環で、今年8月にはAGVや移動式ロボットの分野に参入。AGVの誘導に使う「ビジュアルSLAM(スラム)」技術を発売した。
近年、スラム方式のAGVの普及が急速に進む。従来のAGVは敷設した磁気テープの上をたどるものが多かったが、スラム方式は磁気テープなしで自律的に目的地まで移動できる。スラム方式ではレーザースキャンで周囲の情報を取得する機種が多いが、これをカメラ映像に置き換えたのがビジュアルスラムだ。
AGV に搭載したカメラで取得した映像を解析し、特徴点を抽出。あらかじめ登録した地図の情報と比較することで、自らの位置をリアルタイムで推定する。
製造現場や資材倉庫では、一時的に置かれた荷物などで、状況が常に変化する。カメラの前に荷物があると特徴点を検出できず、AGVが自分の位置を見失うことがある。「画角が広い撮影データを用いるため、特徴点の多くが隠れていても位置を見失いにくいのがキヤノンのビジュアルスラムの強み」と枝窪副事業本部長は話す。
キヤノンでは自社工場向けにAGVを開発した経験があり、そうしたノウハウを活用した。