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2021.02.10

連載

[ロボへの道も一歩からCase.1-⑨]作業の選択と集中/サンエース編

「ロボへの道も一歩から」では、産業用ロボットを初めて導入しようとする会社を記者が訪問、その課程で起きた出来事や苦労などを紹介する。何度も足を運び、ロボットの導入までを追いかける。まだ進行中の計画を取材するため、何が起こるのか誰にも分からない。第9話。なかなか計画が進まない状況に、藤田社長は作業を分割して進める案を提案した…。

アウトは後で考えましょう

【前回までのあらすじ】
水栓金具の組み立てや検査をするサンエース(岐阜県各務原市、藤田斉社長)は、検査工程の自動化に向け6軸垂直多関節ロボット「VT6L」を導入する。しかし、調べてみると動かし方によっては、ハンドと本体が干渉する(ぶつかる)かもしれない。なかなか作業が進まない状況に、藤田社長は提案した…

<前回記事はこちらから>

並べてストッカーに収められているエルボ

「ロボットが手に入っても、思うように進みませんね」(記者)
 サンエースが目指す自動化は、エルボと呼ばれる鋳物部品の耐圧や水漏れの検査だ。仕切って並べられたストッカー(箱)のエルボを検査機へセットして、検査が終わった物をストッカーに並べて入れる。この一連の流れの自動化を、システムインテグレーター(SIer。エスアイアー)に頼らずに実現しようとしている。
 担当するのはベテラン生産技術者の斉藤さんだが、さすがに一人では厳しくなってきたようだった。

「斉藤さんがやっている、あるいはこれからやらなければいけない作業を細分化し、他の人に任せられる所は任せていこうと思ってます」(藤田社長)
 斉藤さんはさまざまな作業ができるため、電気の配線からロボットの架台作りまで、全て一人でやろうとする。しかし、それではさすがに手が回らなくなってきた。

斎藤さんに「アウトの部分はおいおい考えましょう」と藤田社長(左)

「立ち上げ速度を重視すると、他の人にも手伝ってもらって、斉藤さんには重要な所に専念してもらった方が良い。それに、ロボットの動作も分けて考え、ストッカーからエルボを取り出す工程に専念。検査機からストッカーに戻す『アウト』の部分は、一旦、後回しにした方が良いと思っています」(藤田社長)
 エルボは当初の並べて入れるスタイルではなく、傷つかないようストッカーに入れるだけ。まずは段階的にロボットを動かしながら、状況に応じて変えていく考えだ。

「『アウトは一旦、後回しでもいい』と言ってもらえるのは助かります。考えることが絞れて集中できますから」(斉藤さん)

「そうですね」(記者)
その日は、そう話してサンエースを後にした……。

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