[特集 ロボットテクノロジージャパンvol.3②]多様なニーズに向き合う/安川電機 小川昌寛 取締役専務執行役員 ロボット事業部長
自動化ニーズが顕在化
――足元の受注は好調とのことですが、供給の状況はいかがですか。
わが社はこれまで需要地生産の考えのもと、現地調達を強く推進してきました。その取り組みが幸いし、最も好調な中国をはじめ、堅調な欧米、国内向けにも、厳しいながらも何とか一定の供給を保てている状況です。今年6月に中国の常州で立ち上がる新工場ではロボット部品も製造する計画で、底堅い受注状況や市場の拡大に対し、安定供給の維持に力を尽くしています。
――新型コロナウイルス禍以前からロボット市場の成長が見込まれていました。
新型コロナウイルス禍による上振れはそこまで強くは感じませんが、製造現場の課題は顕在化しました。このため、以前から高かった省力化や自動化ニーズをリアルに感じる機会となりました。お客さまにとって自動化投資の優先順位は高く、計画的に予算や行動を配分する方針を再確認できたのではないでしょうか。
多様性が市場をけん引
――特に成長をけん引する分野は。
電気自動車関連の投資は象徴的で目立ちますが、現在の好況をけん引していると言うほどでもないと思います。むしろ、引き合いは自動車関連部品、3C(コンピューター、通信、家電)、建設機械、農業機械など全産業を通じて好調です。昨年度下半期に米国はライフサイエンスの分野など、ロボットの活用領域が着実に広がっています。こうした分野は統計上ではマテリアルハンドリングとして一括(くく)りにされてしまいますが、その占有比率が上昇している点も見逃せません。個々の市場が小さくとも、今の拡大するロボット市場で比率が上がっている事実は、実数としての大きな伸びを意味します。
――多様性が底堅い市況を支えている。
そうです。製造現場に同じものはなく、同じものを作る工場でも作り方や工程が異なります。多様な自動化ニーズに応えるには、システムインテグレーターに任せっきりにするのではなく、われわれロボットメーカーが歩み寄らなければなりません。完成したアプリケーションではなく、お客さま自身が思い描いた「やりたいこと」を実現するのが肝心です。