ドイツのロボット展に見る最新自動化提案【前編】/automatica 2023
欧州最大の産業用ロボット展
オートマティカは欧州最大の産業用ロボット展で、今年は世界34カ国・地域から650社・団体が出展した。規模で言えば東京で西暦奇数年末に開催される国際ロボット展(日本ロボット工業会と日刊工業新聞社主催)の方が大きい。しかし、オートマティカには一つの際立った特徴がある。ドイツのKUKA(クカ)やスイスのABBといった「欧州トップメーカーの本気が見られる展示会」(日本のロボット業界関係者)との評価が高いことだ。今回展もそんな前評判にたがわず各社とも高度なソリューションを展示し、またそれに呼応するかのように日本勢も高レベルな提案を繰り広げていた。
そんな今回展のキーワードを箇条書きにすると、
・ 柔軟性向上による多品種少量生産対応
・ ロボットの高可搬・長リーチ化
・ マシンテンディング(素材を機械にローディング・アンローディングする機能)
・ 協働ロボットの活用
・ 電気自動車(EV)への対応
――となろう。
出展者も来場者も女性比率が日本よりも圧倒的に高かったのは特筆すべきだろう。おそらくロボットに関係する産業への女性進出は日本よりも先を行っている。また、会場を見回すと、キャッチコピーなどを派手に宣伝しているブースは少なく、シックで落ち着いた雰囲気であった。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)がメーカーのブースで具体的なアプリケーションを出展するケースが多いのもこの展示会の特徴と言える。日本の業界関係者は、「日本のロボットユーザーは生産技術部門や保全部門でロボットを取り扱える企業も多いが、欧州には『餅は餅屋。その機能は社内で持たず外部のプロに任せるべき』と考える文化がある。SIerの数は欧州が圧倒的に多い」と指摘する。
KUKAは協働ロボに注力
「今回展はとにかく産業用コボット(協働ロボット)のアプリケーションを見てほしい」と力強く語るのはKUKAのエルリッヒ・ショーバー最高営業責任者(CSO)だ。資本的には中国の美的集団グループに属しているが、ドイツ・ミュンヘンは同社にとっておひざ元に当たる。オートマティカでも毎回必ず最大級のブースで出展しており、今回の展示面積は1000㎡であった。「KUKAは今年で創業125周年を迎える。しかし今後もずっと変化し続ける」(ショーバーCSO)。
産業用コボットのコーナーで強調されていたのは「robots for the people(人々のためのロボット)」。3種類のアプリケーションを展示した。1つ目は、11㎏可搬の産業用コボット「LBR iisy(イージー)」による電子基板の組み立てデモだ。ビジョンセンサーとの組み合わせで繊細で柔軟性の高い動きを実現した。2つ目は3㎏可搬の、同じくLBRイージーによるマシンテンディング。ばら積みされたシャフトを、システム上方に固定されたビジョンセンサーで解析し、最もつかみやすいシャフトの上位3本を常時自動選別し続ける。3つ目のデモは、15㎏可搬のLBRイージーによるネジ締結だ。