3つのイノベーションを/シュンク・ジャパン 星野泰宏社長
再びFA設備業界に
5月1日に就任した星野泰宏社長は「縁があり、FA(ファクトリーオートメーション=工場自動化)設備の業界に戻ってきた」と話す。
シュンクは、ロボットハンドと、工作機械用のクランプ装置を事業の柱とするドイツのメーカーだ。星野社長は1年前まではドイツのロボットメーカーの日本法人の社長だった。シュンクのことは以前からよく知っており、「何かを『つかむ』技術や製品に関してはトップメーカーで、スペシャリストの中のスペシャリスト」との印象を語る。
また工作機械とも縁が深い。ロボットメーカーの前は別のドイツ系企業で工作機械用の制御装置やFA機器の技術を担当。直近の前職はFA設備のメーカーではなかったが、工作機械業界向けに軸受けを販売する責任者だった。
「工作機械もロボットも、ずっと慣れ親しんだ業界。外資系のFA企業にとって国内市場は甘くないが、20~30年先を見据え、顧客やパートナー企業に愛される企業を目指す」と星野社長は抱負を語る。
販路や組織を見直す
星野社長が力を入れるのが、3つのイノベーション(革新)だ。
一つ目が「マーケット・イノベーション」。販路を見直し、販売パートナーを拡充することで新規顧客や新たなマーケットニーズを掘り起こす。
二つ目が「オーガニゼーション・イノベーション」で、社内組織を刷新する。現在はドイツ本社にならった組織構成で、少数精鋭で活動する日本法人にそぐわない部分もあるという。「今は工作機械向けとロボット向けが縦割りで分かれているが、両分野はもっとコラボレーションできる」と星野社長は言う。
最後が「セールスプロセス・イノベーション」だ。販売や製品提案の過程を改善する。数万にも及ぶ幅広い製品ラインアップはシュンクの強みの一つだが、その反面、最適な製品選択が難しいことが課題だった。「専用のソフトウエアで最適な製品を選びやすくしたい。製品には自信があり、最適な提案さえできれば顧客の期待に応えるだけでなく、それを上回れる」と星野社長は話す。
シュンク・ジャパンの伸びしろはまだまだあるという。これら3つのイノベーションを通し、日本でのシュンクの存在感を一層高めたい考えだ。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
星野泰宏(ほしの・やすひろ)
1993年東海大学工学部卒業。98年シーメンス入社。2007年KUKAの日本法人KUKAロボティクスジャパン(現KUKAジャパン)設立に参画、12年代表取締役。20年日本エスケイエフマシンツールジャパン・ディレクター。21年5月より現職。1971年東京都生まれの50歳。