[SI基礎講座vol.3] 生産技術概論①
ロボットのシステムインテグレーション(SI)に関する基礎知識を紹介する本連載企画。今回からは「生産技術概論」を取り上げる。ロボットのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の業務内容やSIerに求められる能力は、メーカーの生産技術部門にとても近い。そこでまずは「生産技術概論」として、生産技術の位置づけや、求められる役割・能力などを紹介する。
〔今回の講師:中小機構 経営支援アドバイザー 加藤栄作先生〕
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【今回のポイント!】
〇ロボット導入の際はその目的を明確に
〇SIerの業務は「生産技術」にとても近い
〇生産技術は製造ラインの立ち上げや維持・管理を担う
まずは目的を明確に
まずは、自動化・ロボット化の目的を考えてみましょう。業務のどの部分をどうしたいですか? その目的は何ですか?
自動化・ロボット化の目的は、生産性の向上や品質の向上、危険作業の代替、コストダウン、労働力不足の解消、ノウハウの継承などいろいろあると思います。
まず考えてほしいのが「何のために自動化・ロボット化をしたいのか」です。
例えば、中小企業で力仕事がある場合、女性や高齢者を除く男性社員だけでその作業を担っている現場は多いと思います。そうなると、人員が足りずにボトルネック工程になりやすいので、その状況を改善したい。
あるいはベテラン作業員のノウハウが継承できていないなら、ノウハウやスキルを数値化して、ロボットで引き継ぎたい。
それぞれ解決したい課題はあると思います。いずれにしても「何のために導入するのか」、その目的は明確に持っていていただきたいと思います。
SIerに求められる技術
導入先企業では、次のような問題を抱えていることが少なくありません。
・生産システムや制御などに関する自社の技術・知識が、以前ほど高くない
・中堅・中小企業の場合は「生産技術部門」を持っていないことも多い
つまり、SIerから見れば、顧客から言われた通りに進めるだけでは、失敗する恐れがあります。全体最適ではなく部分最適になってしまっている場合も多いです。
SIerの皆さんには、顧客の全社最適を勘案した「あるべき姿」を描き、提案する能力を身に付けてほしいと思います。
SIerに求められるスキルは、現状の課題分析やニーズの掌握、あるべき姿の作成、工程分析、システムの企画や基本設計、ラインのレイアウト設計、ラインの構築、設備導入、ティーチング、性能確認などがあります。
これは「生産技術」そのものと言えます。こうしたスキルを身に付けていただきたいと思います。